はる

寝ても覚めてものはるのネタバレレビュー・内容・結末

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「長い夢を見ているようだった」と朝子は言う。麦と亮平、どちらが夢でどちらが現実なのか。
「寝ても覚めても」というタイトルのように、そして冒頭の言葉を裏付けるかのように、闇や夜の切り取り方が印象的だった。闇の合間に刺す光に朝子の顔が浮かび上がる。そこにどういう感情を見ればいいのか私には分からなかった。

地獄のような合コン。死ぬほどいや。

朝子を迎えに来た麦、というか東出昌大に「この世のものではない異質なもの」を演じさせたときの恐ろしさよ。あの人、どうしてあんなに浮世離れした感が出るんだろう。あそこだけめっちゃホラーだった。

「やっぱ待ってたんじゃん」という麦の言葉の残酷さ。麦の顔を見たときから、運命を悟った亮平の目が赤くなっている。麦の手を取り、去った朝子に「やっぱり」と言わんばかりの諦観と、悲しみと、怒りとが混ざった絶妙な表情の遷移がとてもよかった。好きだ~。私の推しの演技がいい~~~~。

「水が重要」な酒造メーカー、訪れる仙台、住むことに決めた家。亮平には水がつきまとう。だから仙台の海辺に麦と来たとき、朝子は亮平のところに帰りたいと思ったのかもしれない。

遺伝子レベルで似ている亮平と麦なのに、どうして亮平が朝子やその友人以外からの誰かに「麦と間違われる」シーンがないのだろう。そこにリアリティの欠如を感じる。あそこまで似てるんだったらもっと騒がれただろうに。あと、麦がレストランに現れたときも、もっと店内が騒然となったのでは?

マヤが本当に好きだったのは亮平なのではないかと勘繰りたくなった。
「本当に楽しかったですよ」と言って亮平を見送るマヤ、「あんな亮平さんは見たくない」というマヤ、憔悴しきった亮平を乗せて走るタクシーに追いすがるマヤ。

序盤にあった事故のシーン、あれこそが朝子と麦を象徴していて、朝子が何もかも捨てて二人だけの世界にいられる相手は麦なんだと思った。 だから麦の手を取ったあの瞬間、朝子は友人のことも、亮平のことも平然と捨てられるんだと思った。あの二人は二人だけでいられるなら他になにもいらない二人で、何もかも踏みにじれるんだと思ってた。でも違った。それが私にはすごく残念で、「なんだよ突っ切れよ」と思ってしまった。麦は朝子のためなら亮平を殺すし、朝子も麦のためなら亮平を振り切るんだと思ってたのに。

震災もALSも、なんだかファッションみたいだなと思った。震災の方はともかく、ALSの設定には一体どういう意図があったんだろう。
はる

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