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寝ても覚めてものtruthのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
5.0
チェーホフのくだりはやはり最高。一緒に行った友人に、ハッピーアワーにはあれの10倍気まずい地獄の打ち上げシーンが2回あると言ったら絶句していた。
足元のショットから名前を呼びあう出会いのシーンの呼応、朝子のみカフェから退出した後の横顔を追った移動撮影、パンを買いに行く麦を見送る朝子から引いていくカメラ、女性3人がソファに座り喋るところを正面から押さえた長回しの素晴らしさ、朝子が亮平に秘密を打ち明けるシーンの2人が収まる長回しと朝子のエモーションの静かな爆発のタイミングの見事さ(2度見て同じところで泣いた)、海を見つめる朝子のクロースアップ、そしてあの溜息しか出ないロングショット・・。枚挙にいとまがない。
原作にもあったが突発性の暴力(蹴りを放つ)によって一発で麦の危うさ不気味さを示して見せた。(後半携帯を投げつけるシーンでもそれは表現されていた)
仲本工事素晴らしかった。特に2度目に朝子を送り出すとき全く朝子に寄り添わなかった台詞、とてもよかった。
黒猫チェルシー、ブレイクダンスまで見せて肉体的に躍動する前半と肉体性を失ってしまう後半のコントラストに胸が痛んだ。2度目見て、春代がスイカを持ってくるシーンで蹴躓くのが後半の暗示になっていることに気づいた。
このような傑作をリアルタイムで、しかも封切り日に観れたことが本当にうれしい。
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