海老

寝ても覚めてもの海老のレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
3.6
とても叙情的で、とても「特徴的」な恋の話。
「そんなわけあるか!」と、居酒屋で馴れ初めを聞かされた友人が叫ぶほどに。

マイペースでおっとりしている朝子が、全く同じ顔をした麦(ばく)と亮平の二人と恋をする。
放浪癖のある麦と運命的な恋に落ちるも、別れも告げずに麦は姿を消し、そんな彼を忘れられない朝子の前に、麦と瓜二つの亮平が現れる。
こう書くと、動線も顛末もありがちに聞こえるけれど、多くを語らず「絵」が物語る描写に引き込まれ、こちらの共感など御構い無しに歩く朝子を、気付けば目で追ってしまう。

朝子は多くを語らない。想像するしかない。

爆ぜては消える爆竹越しに麦と見つめ合う心境を。事故や災害など執拗に描かれる死の匂いの意味を。二つの助手席に座り北へと向かうそれぞれの目的を。防波堤に隠れて見えない海と目前の淀んだ川の対比を。

何より、朝子が終盤に起こす信じられない行動の真意を。

彼女なりの気持ちの整理の付け方なのか、それとも、彼女の言うように少しも成長できない精神が起こした衝動なのか。夢から醒めた心は恋から愛へ昇華されたのか。

分からないし、きっと朝子は分かってもらおうとも思っていない。人の恋情を理屈にあてがって決めつけるのも無粋というもの。
想像するしかない。


正直に言うと、薄い毒でも飲まされたような不快感、それと好奇の目線を向ける気持ちが半々。それも踏まえて大変面白いけれど、人に推薦するのは憚られる。

感性次第といえばそれまで。
そんな、不思議で、叙情的で、特徴的な話。


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とある事情により、5本分のレビューのプロットを固めるまで、次回の更新はお預け状態です。何故、5本分か…?意味深ですね。全くもって謎ですね。

ただでさえ最近遅筆に悩んでいるので、いつになるのやら。
海老という小物がいること、忘れないであげてください。寝ても覚めても。
海老

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