タンシロ

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のタンシロのレビュー・感想・評価

4.0
ディズニーワールドという資本の傍ら、モーテルにその日暮らしで生活を営む貧困社会層の現実を描いた作品。ムーニーという少女の無邪気と母ヘイリーの金策という現実の応酬。
ムーニーがひとりバスルームで戯れるシーンが唐突にむ無意味に繰り返されるが、その意味が後に重くのしかかる様は圧巻。あまりにも辛い現実だが、当事者たちに悲壮の表情はほとんど見られない。子のムーニーと母ヘイリーの抱える不安や心配は視聴者の想像力に委ねられる。そういう構成にあえてしたことが観る人たちの受け取り方を二分するように感じた。

当たり前に観るとあまりにも母ヘイリーの振る舞いが無謀に愚かに見えるが、やはりそれは子を心配させないための精一杯の愛情であることはどうしても否定できない。そこが印象的であり魅力的な映画だった。

無邪気に振る舞うも、大人の人が泣く瞬間を感覚的に理解できるほど感覚が研ぎ澄まされたムーニー、彼女が最後に涙するシーン、夢のような毎日から現実という悪夢に引き込まれるムーニーを親友が思い付くままに夢へと誘うラスト、そこからエンドロールへと繋がる余韻がたまらなく芸術的に感じた。
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