スチールラグ

月子のスチールラグのレビュー・感想・評価

月子(2017年製作の映画)
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ゴールが見えなかった。
物語の歩みは遅く、不安になり、
途中で何度も観るのを止めようと思った。
でもこの物語の行き着く先を見届けたいと思った。

月子を演じる三浦透子さんが凄い。
表情だけでなく、指先まで全身を使って表現してくる。
森ゆにの歌う讃美歌は、月子の神性の象徴だと思う。
一方、タイチの態度は粗野で素っ気ない。
でも、心に大きな傷を持った若者が、
障がいを持った少女と初めて接するのだから、
自然なのかも知れない。
それでも、少しずつ通じ合う二人が愛おしい。
大切な指輪が、月子からタイチへ。
そしてまたタイチから月子へ。

物語の到達点は全く予想もしていなかったところだった。
福島県双葉郡富岡町。
僕も、そう知っていて、この日に観ていた訳では無い。
二人が辿り着いた海は、もう日を失いかけていて、
空も海も濃い青で、でも果てしなく透き通って見えた。
真ん中にポツンと立つ二人もその青に染まっている。

でも、本当のエピローグ。
人混みのなかで、手を繋ぐ二人。
ゴールが見えた訳ではないけれど、希望が見えた。
もう、一人じゃない。

偶然、この作品をあの日に観た。
決して、あの事を忘れない。
スチールラグ

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