しゅん

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリスのしゅんのレビュー・感想・評価

4.0
観る方が知性と感性を意識的に働かせることで楽しめるのがワイズマン映画だと思うので、頑張ってみたぞ。

ニューヨーク公共図書館、『バナナフィッシュ』のラストシーンを思い出すし、実際に行ってみたこともあるのでなんとなく好意を持っていたのだけど、教育、福祉、資料収集、講演会、演奏会と、とにかく色々なことをやっていたことに驚いた。分館がめちゃくちゃ多いのも凄いな。ニューヨークの複雑な歴史が一堂に介した感があり、『ジャクソンハイツへようこそ』の多民族性と重ねると、ワイズマンがこの街を本当に愛していることが伝わってくる。街中の車の音、講演会や説明会を聞いている人々の顔、盛んに意見が交わされる会議室と静謐さを宿す廊下の対比など、説明を廃されれるが故の詩情にひたすらグッとくる。この詩的なアウラの奥に政治性がグツグツ湧いているんだろう。映画の真ん中あたり、詩人ユセフ・コマンヤーカが自分の詩の政治性について語った言葉は、ワイズマン映画にもそのまま当てはまるものではないかと思った。そして、終わり方がカッコよすぎて、思わず笑ってしまった。

ミーハーなので、ドーキンス博士、パティ・スミス、タナハシ・コーツが出てきてキャッキャしました。エルヴィス・コステロがグリール・マーガス(アメリカの著名な音楽批評家)に「レッテル貼りがち、おれの曲も時期によって違うし」と苦言を呈しているところで楽しくなる。
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