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マーウェンのmのレビュー・感想・評価

マーウェン(2018年製作の映画)
4.7
攻めてる。ただCG人形劇の映像ギミックだけではない。複雑な人間を一般受けなど気にせず複雑なままに描いていて、なかなかに凄い映画だった。

主人公がヒールを履くのを好む事が重要なポイントになる。彼は『ヒールを履くと女性の本質と繋がる気がする』と語り、それが歪んだフェチ的なものでもゲイという訳でもない(普通に女性に惚れるし巨乳好きらしいというのも描かれる)、というカテゴライズできない感情であるという複雑さ。
ここを削ったほうが大衆には飲み込みやすくなったはずなのにそうしなかった事がこの映画の重要なポイントで、言ってみると『志』に近いものだと思う。それは劇中で判事が告げるヘイトクライムを立証する為というようなポリコレ的理由というより、『人間』を描く事、実在の人物の『魂』を描く事なのだと思う。
この映画は彼の空想のままに人形世界も描く事で、彼の心の世界を主観的に描く事に成功している。

観ながら途中までは女性の理想化というか幻想化が結構ヤバいなと思っていたが、主人公は男性的ではなく女性的な人間でもない絶妙な人なのでそこまで気にならなくなるし、しかし明確に女性にとって気持ち悪い人ではあって『それはあなたの幻想だよ』という事も劇中で描かれるので良い。
そう、彼の『気持ち悪さ』を漂白しなかった事に驚いた。勇気ある選択だと思う。

最初はCG人形劇が「キャッツ」より気味悪いと思ったが、現実世界とのシームレスな行き来で次第に慣れるし、その捻れた異形さこそが本質なんだろうと思う。その異形さを意図的に残しているのが良い。

ゼメキス監督らしい驚異的なカメラワークも健在で、現実と人形世界のシームレスな行き来だけでなく普通のシーンのさり気なく巧いカメラワークによる語りにも息を呑む。
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