Omizu

宮本武蔵のOmizuのレビュー・感想・評価

宮本武蔵(1954年製作の映画)
3.9
【第28回アカデミー賞 名誉賞受賞】
稲垣浩監督、三船敏郎主演の3部作の1作目。アカデミー賞名誉賞(後の外国語映画賞)を前年の『地獄門』に続き日本映画が2年連続で受賞した。

宮本武蔵ってこんな話だったっけ?と思ったのもそれもそのはず、あくまで吉川英治による小説の映画化であって、史実とはかなり異なるという。

イーストマンカラーによる鮮やかな色彩は素晴らしく、時代劇に合っていてとてもよい。少なくとも『地獄門』より断然こっちのほうが好き。

武蔵が悪童と呼ばれるほど自分本意な人物から、沢庵和尚の導きにより「他人のために」ということを身につけ宮本武蔵となるまでを描く。

沢庵和尚は最後まで何考えてるか分からないというか、この人物造形で合ってるのかな?とは思った。かなり酷いことをするわけで、教え導く存在なのに悪役に近い。

そして武蔵に拒否されたお甲は徹底して悪女として描かれるが、この作品だけだとあまりに中途半端。続編で成敗されたりするのかな?

八千草薫演じるお通はお甲に対して正義、純粋な女性として描かれ、待つだけではない芯の通った女性としてとても魅力的だと思う。

人物造形に難はあれど、概ねなかなか楽しめた。イーストマンカラーを存分に活かした撮影が本当に素晴らしい。演出も過剰でなく、動きや表情による表現がなかなかよく、役者を上手くコントロールしているように感じた。時代劇にありがちな劇伴のうるささもそこまで感じず、全てがいい塩梅。

続編で宮本武蔵の活躍を観たいと思わせるほどには楽しめた。
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