怒りの先に、光はあるか---。
怒りは怒りを来たし、
燃えさかる炎は魂を焼き尽くす。
終わりの見えぬ暗闇に、
ふと差しこむ希望の光。
彼女の怒りの根源は、
娘を奪った犯人への憎しみか。
はたまた自分の行いへの自責の念か。
一人は、失ったものの大きさに膝をつき、傷ついた心を覆い隠すように古看板を赤く染める。
一人は、己の未来が見えてなお、怒りに染まらず誠実であり続けた。
一人は、荒れ果てた心に投げ入れられた炎を目の前にして、自分が歩んできた道を振り返る。
怒りが怒りを呼び多くの魂が犠牲になった。
されど、赦しは赦しを来たす。
怒りの炎を燃やすのは人。
怒りの炎を鎮めるのもまた人。
生きていればいずれ火傷は治る。
しかし残ってしまった傷跡には今なお忘れえぬ熱が篭もる。
決して消えないひきつれを抱えながら、
生きてゆく。
『怒り』の連鎖と『赦し』の温かさを直に見つめられる大傑作。