少し前になってしまうが、今のところ、今年に入って観た中で一番素晴らしいと思ったのは、『スリービルボード』だ。
非常に地味なつくりの作品で、実際に全てが抑えられた演出であるがゆえに、終盤に起こる展開に心を打たれる。全く予備知識なく観たので、最初は主人公ミルドレットの無謀な挑戦の物語として観ていた。広がりのある画面との対比で孤軍奮闘する彼女の小さな姿が印象的で、きっとこの挑戦は成功し得ないだろうと思った。しかし映画は彼女の挑戦の物語だけではなく、その周りで巻き込まれていく人々の人間性も描き出していくのだ。それぞれにそれぞれの事情や信念があって事件が起こってしまうのが、なんとも言えない気持ちになるが、この映画のとても面白い点でもある。
役者さんの演技は噂に違わぬ素晴らしいもので、物語にどんどん引き込まれてしまった。さらに物語の展開のさせ方、登場人物の心理描写、緩急ある編集とダイナミックな映像も秀逸。
