TATSUYA

スリー・ビルボードのTATSUYAのネタバレレビュー・内容・結末

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます


*ディクソンの怒り
・エビング警察という組織
→3枚の広告が出てからの反応「名誉毀損だ」
バッジを日頃つけていない(失くしている)程度にはろくでなしの乱暴な警官
・広告を設置した黒人青年の発言「見たことある顔だ」(ディクソン刑事の名前まで記憶している→広く認知されている素行の悪い警官)
・広告屋レッドの「殴るのは黒人だけじゃ?」
・ミルドレッドの「地元警察は黒人の虐待に忙しく」「最近も黒人を虐待してる?」
・過去に証拠のない被疑者を殴っている
→差別的な発言(「このメキシコ野郎」)から踏まえて特定の人種に対して排他的な考えを持っている
・母親に対して"虐待"のことを知られたくない様子(黒人ではなく"有色人種"と強く主張する姿)
・広告屋のレッドに対する横柄な態度(昔から知っていてずっと嫌い)
・レッドという名前について「真っ赤な共産主義を自慢しているみたい」「キューバのホモは殺される」
→心の底では理解している"人道"と周りに合わせなければならない"社会的正しさ"の間で葛藤し揺れ動く(差別的な価値観が根差している地域で育ったため)
・母親を大切にし、署長を父のように慕っていた
→この二人を尊敬しているため要素として本来的には優しい人格を持っているはず
・父親の死後苦労した(差別的な考え方も父親や育ちの過程に関係している?)
・火炎瓶を投げられた直後、火が燃え移った手紙を一番に優先
・広告屋のレッドの無垢な優しさを受け自責の念
→包帯グルグル男をディクソンだと認識してなおオレンジジュースをぶっかけることなくストローを差すレッドの"許し"
・レイプ男のDNAを採取するまでの冷静な判断と行動
→そのレイプ男の逮捕に積極的でない警察に対してバッジを返上(自分のあるべき姿、指針を見つけた?)

*ウィロビーの怒り(?)
・やや歳の離れた若い奥さん
→セックスの描写(「あなたのムスコは立派よ」奥さんのお世辞?男としては情けない?)
・「自殺すること自体は勇気ではない」
→家族に辛い思いをさせるような悲しい別れを強く拒んだ(思い出を綺麗なままで)
・犯人逮捕のために手段を選ばないミルドレッドに対する気遣いと嫌味っぽいジョーク
→ミルドレッドの怒りに対して半分は怒り、半分は同情の念?それでも自殺はミルドレッドのせいではないという手紙

*ミルドレッドの怒り
・「死んだ後じゃ意味ないでしょ?」という言葉を署長に投げかける(私の娘も死んでいるのだからという嫌味?)
・動物の幻(本心での対話?)「神はいないし世の中が荒んでるから?そうは思いたくない」「あの子は死んだ。生き返りはしない」「何かあげたいけど硬いスナックはのどに詰まるかも」
→"行き場のない"怒り(本当に悪いのは警察ではない)をすべて承知しているのに受け容れることができない
・娘に対して後悔と自責の念を持っている(手付かずの娘の部屋、元亭主と息子とのシーン等々)
→わかっていても諦めることも抑えることもできない憎しみの感情(「ゲスどもに復讐」)
・3枚の看板が燃える順番
→ウィロビー署長の看板が一番最初(ウィロビーに対する怒りは正当ではないと自覚している?)
・看板を燃やした犯人が元亭主とわかる(この時に小男の優しさを無下にし失望させる)
→元亭主を酒瓶でぶん殴ることなく「その子を大事にして」と瓶を置いて去る("怒りは怒りを来す"の連鎖を断ち切る)
・ブランコのところでディクソンに対して感謝(ブランコに座って話すのは劇中での本心?)

*怒りは怒りを来す
・「あんた以外に誰がやる?」わかっていてミルドレッドを"許し"ているディクソン
・レイプ男を殺すという目的でアイダホに向かっているのに殺すことに「あんまり」な二人
→"怒り"に対して"許し"を知った二人(物語上の悪人であるレイプ男を殺すこと自体ある意味正義を果たすかもしれないが残された家族がいる二人にそうする意思はない)
・「望むより努力」という言葉の通り二人はこれからの人生をどのようにして生き抜いていくか
→かつて"迷ったやつかボンクラしか通らない道"を通った二人は「道々決めればいい」



[メモ]
小男・チャーリー(動物園女、顔もラクダっぽい)・メキシコ配達人・馬・ドナルドサザーランド
神父に対して聖職者批判(クリップスとブラッズ)
ミズーリ州・ワイオミング・メキシコ
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