亜硝

スリー・ビルボードの亜硝のネタバレレビュー・内容・結末

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

超良かった!!
前半の会話劇はやや退屈だったけど、署長が自殺してから本番。ミルドレッドとディクソンがクライマックスまでヘビー級のパンチで殴り合う感じが最高!全く予想のつかない方向に話が転がっていって、もうこれ収拾つかないんじゃ……と思ったところでキュッ!と方向転換して、見事な着地でした。鑑賞後は何か騙されたんじゃないか?というくらいものすごく爽やかな気持ちになってる。

なんと言ってもスリービルボードというシンボルのインパクトが素晴らしい。発光してるんじゃないかというくらい毒々しく輝く、イチゴヤドクガエルのような赤色と黒のカラーリング。しかも1枚じゃなくて3枚!!燃やされても鮮やかに蘇る!まさにミルドレッドの憎しみを体現したような存在でした。

ただ、ミルドレッドが憎しみの対象として向けていたのはレイプ犯ではなく、マトモな捜査をしてくれなかった警察の方。そんな彼女は、死後ビルボードに寄付をしてくれた署長やボロボロになりながらも犯人を追いDNAを奪取するディクソンの姿を観て徐々に警察への怒りを解いてゆき、ラストには彼に向かって笑顔が綻ぶ。ディクソン彼女みたいな強いおばさんは大好き。ターミネーター2のサラとか思い出しますね。

また、ディクソンは署長の自殺の原因であると考えたビルボードに憎しみを向け、広告代理店のレッドを二階から投げ飛ばす。だが、後に彼からも許し(とオレンジジュース)を受けることにより、ディクソンも敵は広告ではなくやはりレイプ犯であることに気がつく。車中、ディクソンが警察署を燃やしたミルドレッドを許すあたりの下りが見事でした。

ラスト、今までビルボードを介して向き合っていたミルドレッドとディクソンが横並びになって
レイプ犯を殺しに車を走らせるシーンはまさに和解と同じ目標に向けての再出発を象徴していて、この上なく美しいシーンでした。その後、二人は本当にレイプ犯を仮想敵として殺しに行くのか?未来のことはわからないけれども、両者が共に肩を並べて前に進んで行く様は間違いなく希望に満ちたハッピーエンドだと思いました。

単に予想を裏切るための裏切りじゃなくて、人間の多面性がどんどん明らかになっていく形で展開が進んでいく様もパーフェクト。「こいつはこんなことしないだろ!」みたいな裏切りじゃなくて、「こいつ、こんなこともするのか!」とかみたいな裏切り。文句の付け所ないです。おすすめ。
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