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ダンボのペジオのレビュー・感想・評価

ダンボ(2019年製作の映画)
3.1
世の中に認められるつらみ寂しみ

原典からのアレンジ具合はポリコレやそもそもファミリームービーであるという点を踏まえたら、充分すぎるほど考えられていると思う(本作のダンボは酒を飲まない!子供だから!)
映像のファンタスティックさや役者陣のイイ顔集めた感は流石のティム・バートン
でも雇用主をディスるのは程々にしとけよ!

マイケル・キートンとダニー・デヴィートの共演、アルファベットの遊びなど『バットマン・リターンズ』を思い出さずにはいられない
しかしあの作品と本作に共通して描かれる「フリークスへの愛」は似て非なるものの様だ
あの頃のティム・バートンにとってそれは彼の表現の根幹にあったものであったろうが、本作(というか最近のバートン)では単なる監督としての武器に過ぎないのかも
昨今のダイバーシティ信仰の世の中故か、彼自身がきちんとした評価を受けたからなのか、ここで描かれる「フリークス性」は既に「個性」として「尊重されるべきもの」の前置きがある様に思える
多分だけど、何よりダンボが「象の世界でフリークス」であるという視点が無いからじゃないかな
だって人間から見れば耳の違いなど気にならないほど「可愛い」のだもの
それは動物だから、赤ん坊だからという「最初から約束された可愛さ」
それを責める者は「人でなし」だと観客全員が「知っている」のだ(だからそれを殊更に迫害するものはあっという間に退場する。悪役が「一見フリークスの理解者っぽいが、そこに実際以上の夢想を求めている健常者」という「感動ポルノ」を揶揄した様な視点が現代的な部分だろうか。)

『リターンズ』とは「フリークス」と「その敵」の善悪の構図が真逆であるのは、それだけ社会が成熟したのだと喜ぶべき事なんだろうさ(個人的にこの配役は敢えて逆の方が良かったかも。ダニー・デヴィートが悪役を演じてたらキャラクターの歪みが映画の深みを増してくれたような気がする。)
「これは個性である!」と公然と宣言できる世の中
だがその結果、絞り出したような「魂の叫び」はここにはもう無いのだ…
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