えいがドゥロヴァウ

ブリグズビー・ベアのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.6
2016年は『神様メール』
2017年は『スイス・アーミー・マン』(filmarksにレビューを投稿していないという致命的な落ち度)
そして2018年は本作
突飛なシチュエーションを用いる人間ドラマというのが
つくづく自分は好きなのだなぁと再確認

赤ちゃんのときに拉致られて
拉致した夫婦に愛情たっぷりに育てられたジェームズ
世を憚る感情からか
夫婦は外には有毒な空気が蔓延してるという嘘でジェームズを閉じ込め
その愛情の結晶たる教育プログラム的宇宙アドベンチャードラマ「ブリグズビー・ベア」を自主制作して
それをジェームズは夢中になって見た

この育ての親たる拉致犯夫婦が逮捕されて本当の家族のもとに帰ったジェームズが
戸惑いながらも外界に触れるに連れて見せる人柄の良さは
彼の人格形成のすべてとなっていた「ブリグズビー・ベア」の優れた教訓的要素の証左であって
それはつまりは拉致犯夫婦の教育の賜物だということ
この皮肉の如何ともしがたいグレーさたるや…

この映画の素晴らしさは
どの人物の心情に対しても寄り添えるということ
実の両親は「異常者」の拉致犯が作り上げた世界にジェームズが入れ込んでいることを受け入れられない
それも分かるし
一方で恐らくは自分らの子供を望めない夫婦が衝動的に子供を攫って
そんな状況の制約があるなかでその子を本当の子供として扱い愛情を注いできたことも分かる
ジェームズの妹の友達のスペンサーがフラットな視点で「ブリグズビー・ベア」の面白さを感じたことも分かるし
その魅力をスペンサーと分かち合えたジェームズの喜びも分かる(このシーン泣ける)
事件で一躍有名になった兄との距離を掴めない妹の気持ちも勿論分かる
特殊な状況を設定しながらも
敢えて誰も悪者に仕立て上げようとしないこの映画の寛大な姿勢に
僕は感動を覚えました