ヒラッツカリー

ブリグズビー・ベアのヒラッツカリーのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.4
触れ込みで好きな方々がこぞって良いと言っていて、そのまま予告を見る。これはどうだろう、好きなタイプかもしれない、とちょうど地元で公開していなく、福岡へ出張があったので時間を作って見に行った。
控えめに言っても、傑作でした。

主人公は核シェルターで暮らす25歳。
何か違和感がありながらも、どことなく不思議な父と勉強や家庭の手伝いをしてほしい母との暮らしを続けている。
閉じこもっている中の生活で唯一の娯楽が子供向け番組"ブリグスビーベア"であった。
毎朝、ポストに新作が投函される「配達型デアゴスティーニ」と言えるような配布方法。これは父が自作で作り上げた主人公だけの為の"娯楽"であった。
そののち、警察が突入し、父と母2人は逮捕される。彼も警察へ保護される。その後伝えられる真実。それは父と母と思っていた2人はある家族から誘拐して連れてこられた子で、20年近くも逃げるために監禁し人里離れた荒野でひっそりと暮らしていたのである。
元の家族へ引き渡され、一躍時の人になる主人公だが何が何だか分からないまま。
何もかもが遅れていて自分の周りの大きな変化について行けてないまま。それも何故か彼は気付けない。そんな事よりも、自分の娯楽、楽しみであったブリグスビーベアの新作が見たくて仕方ない。
がしかし。そんな虚像の中で作られた彼だけの"虚像"はケーブルテレビでもNetflixでもやっているわけでもなく、各御宅へ新作のVHSをポストへ投函されるなんてもってのほかで。
それに気付くと少し落ち込むが、前の父が作演出していた事に驚き、自分でも作れるのではないかと考えてしまう。
そこから彼の純粋で無垢なブリグスビーベアという"虚像"への愛が周りを包み込みながら、新作を作っていく、というストーリーです。
(マークハミル演ずる元父親。物言わず不穏な空気が漂う中の"息子"を思う優しさがすごく良かった。特にあのナレーションw そしてあの刑事さん。あの人の最初から最後までの優しさがもう涙腺を刺激されました)

もうなんていうんだろうか。
最初のシーンで"ルーム"や"クローバーフィールド レーン"を思い出して、この展開はサスペンス風でいくのか、と思いつつ段々と優しい雰囲気が包んでいく。
これは自分の周りに盲目になりながらも、ブリズグリーベアという自分が心底大好きなものに対する愛情の光を追い求めていく内に、周囲にもその愛が伝染し主人公の無垢な心に共鳴して優しさが溢れていくような感覚でありました。
ただただその周りの「優しさ」に涙が溢れ、ラスト付近はずっと涙が止まらなくなっておりました。
自分が好きだった事を、やりたかった事を歳をとっていくから、周りの足並みに揃えるために、辞めるのは分からない。
彼は担当の刑事が演技していたことに驚き喜んだが辞めた理由を聞いた時にそのように言っていた。世の中ってそれが当たり前になっている。だけども、「無から有」を作り出し、それに勇気や愛を学び、それを胸に直向きに走っていく主人公は僕にとって"光り輝く可能性"のように見えました。
羨ましい…子供の気持ちを捨てきれない大人未満さ!!!みんなそうじゃないか!?
なんで僕は、社会やしがらみ、周りの期待や不安やお金、暮らしのために生きているのか!!畜生!!!
やりたいことやりたいさ!!!

ああ、ブリグスビーベア。
何か、なんでも良い。これが好きだ!アニメでもスポーツでも映画でも。自分の根底に愛すべきものがある全隠れオタクさん達に告ぐ。
見るべきです。見てください。お願いします。見てください。周りが優しいんだよ。誰も主人公の周り、悪人に見えないんだよ。
しかし。何か作り出す事って本当に素敵な事なんだなぁ…ありがとう。素晴らしい出会いです。
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