クルセ

BRAVE STORM ブレイブストームのクルセのネタバレレビュー・内容・結末

BRAVE STORM ブレイブストーム(2017年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

MX4Dにて鑑賞。
全体的に清く正しく「現代式B級特撮ヒーロー映画」という感じでした。
バカ映画ではなく、低予算を端々に匂わせつつも「俺達はこういうのが作りたいんだ」とでも言うような、作り手の熱量を垣間見たような気分になりました。

原作は宣弘社の「スーパーロボット レッドバロン」と「シルバー仮面」の2作(このうちシルバー仮面は未見)ですが、ぶっちゃけキャラクターのデザインモチーフ、登場人物の名前、一部設定や人間関係を流用している程度で、お話自体に原作知識が必要ということはないです。
あらすじも割りとシンプルな部類で、侵略者キルギス星人に滅ぼされようとしている人類の未来を変えるため、あるデータを持って過去へと向かった「シルバー仮面」組、春日兄妹の末っ子、はるかと、そんな事情も知らずプロを目指す傍ら裏社会の賭けボクシングに興じる「レッドバロン」の主人公、紅健が出会う、というところから話が始まります。
全体的にリブート版「レッドバロン」の第一話に「シルバー仮面」が大きく関わってくる、というような展開で、実質初めて見るヒーローながらレッドバロンと並び立つべきシルバー仮面の誕生譚は冒頭にさらりと語られる程度で済んでしまうのが難点の一つです。
それ以外にも、少々「シルバー仮面」側に粗が目立つか、という印象も受けます。
特にはるかについては、超能力者という設定はいいのですが、余りに多様な超能力が使えてしまっているうえ、それを使用する場面やその後の戦闘シーンが余りに唐突という感じが否めませんでした。
また、予算の都合もあるのかはるかのみならず、シルバー仮面のアクションもけして低クオリティというわけではないのですが地味すぎたかな、と。
特に後半は重量感あふれるレッドバロンの戦いと平行なので、より一層地味さが際立ってしまう(それこそがシルバー仮面のキャラクター性かもしれませんが)のが見ていて気になりました。
他にも低予算の影響もあるのか、割とぶつ切り感を感じる場面転換があったり、アングルにやや苦しさを感じたりというのもありましたが、自分はそこまで気になりませんでした。

個人的には「新しく作る」という意気込みが強すぎるのか、原作を意識した台詞回し、仕草が特に存在しないのは評価の別れる点だと思います。
なくていいけど、あると知ってる人はニヤリとできるポイントというか。
それがあまりにもなさすぎて「レッドバロンとシルバー仮面でなくてもいいのでは?」と思わなくもないのですが、両者の使命感は原作のヒーローたちと変わらないものである、というように感じました。

映像面もシルバー仮面は地味に感じましたが、レッドバロンは一転「日本映画でここまでの巨大ロボ戦が見れるとは!」と思ってしまうくらい、気合の入ったCG戦闘が展開されていました。
また、静止画やポスターの段階では今ひとつ格好良く見えなかったレッドバロンが「巨大ロボットだから足元から見上げるもの」と言わんばかりに煽りのアングルで映った時の格好良さは随一。
ディテールに隠された、意外とシンプルなシルエットがまさに「戦士」という風格を持っている、とさえいえます。
不自然なほど挙動が軽いということもなく、昼間の戦闘シーンということもあって個人的にはかなり評価したいところです。

キャスト陣の演技も個人的には良かったです。
後半までずっと苛立っているシーンがほとんど、というシルバー仮面/春日光ニ役の大東駿介さん、冒頭のチャラチャラした感じと中盤の怒りを露わにする場面など「近くに居たらあんまり関わり合いになりたくないなこいつ」と思わせるほど名演だった(と思ってる)紅健役の渡部秀さんのW主役は当然、冒頭で健の前に現れるキルギス星人の尖兵であるロボット?を演じた方(失礼ながらお名前を失念)の不気味極まりない雰囲気、それらのリーダーらしき個体を演じた松崎悠希さんのヒーローと並んでも遜色ない迫力、今作がデビューと思えないほど、出番は少ないながらも「擬似的な父親のような年長者らしさ」の出ていた春日光一さんなど、みなさん素晴らしかったと思います。
あと、ところどころで妙に知名度のある方が出てくるのも人によっては見どころかもしれません。

デザイン面は好き嫌いが別れるにしても、原典のデザインを生物的アレンジするにとどめたキルギス星人とチグリス星人に対し、一気に現代的デザインとなった二大ヒーローはよく対比出来ていると思います。
レッドバロンは先述したとおり、カメラアングルの妙を感じられ、かつメカニカルで素晴らしいと思いますし、シルバー仮面も後半で登場する強化型スーツは原典の「西洋兜がモチーフ」という点をうまく生かし、フェイスガードが実際にフェイスガードとして機能する点などはかなり好みです。
敵のロボットであるブラックバロンは、余りに製作事情を感じたのでノーコメントで。

あと最後に、注意喚起というのもなんですが、パンフレットは帰りに買ったほうがいいです。
割と重大なネタバレが載っていますので……。
クルセ

クルセ