rumi

007/ノー・タイム・トゥ・ダイのrumiのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

青。

墓場のシーンで印象に残った色だった。
砂の淡い黄土色の中に際立つ青い瞳と、服。
そのシーンを見た時、この話の重要なテーマカラーは青だと確信した。

誘導、引き込み方の巧みさに圧倒される。
序盤の観客の心を掴む要素として、日本の能面が取り入れられている。
恐ろしさの中に神秘さを感じるのは、
単に私がマスクフェチだからだろうか?

前半はテーマを提示するため、後半でそれらを昇華するためのパートに分かれている。
上映時間が長くて途中身体が固まったが、それでも作中飽きを感じることはなかった。

全体的に完成度が高く、センスがよく、従来の常識をぶち壊し、現代的で、最高の映画だと強く言える。

しかし私は007のコアなファンではない。
なので流れを完璧に覚えてはいない。
その中でも結末にだけは違和感があった。

無理やり主人公を死なせるための強引さが際立っており、主演の俳優さんが年齢が理由で引退するためのストーリーなのだろうという現実感があった。
俳優さんがいなければ映画もない。
現実的な問題は必ず創作物とガッチリとリンクしてくる。
そこを理解して「お疲れ様でした」と賞賛を送りたい気持ちと、「ラストを含めて創作物としての完成度の高い映画を見たかった」という気持ちの両方が折混ざった気持ちで映画を見終えた。
敵側の細菌兵器を使った人類に対する攻撃の理由もとても弱かったと思う。

新しい007がいて、スペクターも壊滅して、愛すべき家族は生まれたのだから、幸せに生きる環境がやっと整ったように見えた。
細菌感染したら一生除去は無理だと言っていたが、死ぬわけではなさそうだし、無理を可能に変えられるのが映画の最大の効果なのではないかと思ってしまう。
現実では人は必ず死ぬ。ならば映画の中くらい、生かしておいてくれたっていいのじゃないのかと私は思ってしまう。

とはいえ、バッドエンドが減点にほとんどならないくらいに素晴らしい映画だったと思う。
多分、もう一度見に行く。
rumi

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