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ブラッド・スローンのlptsのレビュー・感想・評価

ブラッド・スローン(2016年製作の映画)
4.0
「変化球」

 本作は刑務所を舞台にした映画だが、劇中様々な変化球が使われている。今どき、ど直球の刑務所映画をつくっても二番煎じになってしまうので、今までとは違うやり方で物語を描こうとする監督の姿勢は素晴らしい。本作で一番特徴的なのは、時系列をミックスしているところだ。逮捕前、刑務所、出所後、この3つのパートがごちゃまぜになっている。この3つのパートが、パズルのピースのようになって、ストーリーが進むにつれ組み上がっていき、最後には見事にパズルが完成する。鑑賞中、このパズルの完成図を観客が完璧に予想するのは不可能に近い。自分も、本作のラストは全くよめなかった。

「リアリティ」

 本作は、脚本にも変化球を使っている。エリートサラリーマンが刑務所に入りギャングになるという、今までとは違うアプローチの脚本だ。一見荒唐無稽に見える脚本だが、主演の演技と刑務所内の圧倒的なリアリティ描写で、ストーリーに説得力を持たせていた。本作の主演の演技は素晴らしく、逮捕前と出所後では、身体付きから顔つきまで全くの別人になっていて驚いた。そして、刑務所内の描写もとても質が高かった。役者の演技と刑務所内の描写が少しでも粗末な出来なら、またたく間に破綻してしまう作品を、クオリティの高い形で完成させた製作者陣と役者陣に拍手を送りたい。

 自分が、刑務所パートで特に良かったと思ったのが、乱闘シーンだ。乱闘に使われる武器が、どれも日用品を改造してつくられていたり、草に紛らわして隠されていたりと、製作者陣がアメリカの刑務所をちゃんとリサーチしたことが伝わってきた。そして、このいかにも痛そうな凶器を容赦なくぶっ刺すバイオレンス描写も素晴らしかった。

「囚人トレーニング」

 筋トレを趣味にしている自分にとって、本作のようなトレーニングのモチベーションにつながる映画はありがたい。本作にはコンビクトコンディショニングと言われているトレーニング描写が数多く出てくる。これはポール・ウェイドという元受刑者が編み出した自重トレーニングをメインで鍛えていく方法で、本作には、様々な自重トレ風景が出てくる。本作ほど、受刑者が自重トレをするシーンが盛り込まれている刑務所映画ははじめて見たので新鮮だった。
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