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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のEDDIEのレビュー・感想・評価

4.5
1980年、韓国の光州事件全貌を詳らかに追求した意欲作。爽やかなポスターとは対照的に当時の隠蔽体質や軍事体制をシリアスに描く。国内ですら嘘を垂れ流すニュース、報道に自由はないのか。終盤のカーチェイスのエンタメ性も含め発信する意義深い傑作。

〈ポイント〉
・シリアスな作風ながら、ソン・ガンホのキャラクターや演技もあり万人受けする作り
・実話を元にした物語…こんな事実があったのかと息を呑む展開は一見の価値あり
・軍人との逃避劇のシリアスでスリル感溢れる演出は見もの
・クライマックスのカーチェイスは臨場感たっぷり

〈雑感〉
1980年の光州事件の真実。
実話を元に描かれた社会派ドラマですが、程よいコメディ要素とアクション要素も入ったとても高水準な映画でございました。
これは2018年の公開年に観ていたら間違いなく年間ベスト10に入れていましたね。

『パラサイト 半地下の家族』で描かれたような貧困家庭にフォーカスを当てながら、それよりも大きな韓国の闇の部分に追求した作品。
序盤はお金に目がくらむ低所得層さながらの下品さを絶妙な愛らしさでバランスよく表現したソン・ガンホに魅せられますが、それよりも知ってほしいことがあるとかなり厳しい現実を突きつけられます。

『1987、ある闘いの真実』という韓国映画で描かれたクソみたいな警察の愚行を見ていたので、そこまでの驚きはありませんでした。
ですが、本作で描かれる韓国の国をあげた隠蔽体質というのに心底哀しい気持ちになりました。
そんなに真実を世界に知られるのがイヤかと。人を苦しめてまでやることなのかと。
この作品で傷つく人々をたくさん見せられますが、そのいずれもが無慈悲です。
罪なんてない人がどんどん傷つけられています。
それを世界が知らないどころか、光州の外、同じ韓国内でも知らない人ばかりだったということです。
真っ白な新聞、報道の意義とは?本質とは?
様々な感情が渦巻き、はらわたが煮え繰り返るような想いでした。

そして、ソン・ガンホ演じるキムとトーマス・クレッチマン演じる記者のピーターの絆。
最初はドタバタ劇で信頼も何もあったものではない二人でしたが、終盤には一気に距離が近づき、苦難を乗り越えた二人の間には簡単には切れない固い絆がありました。

過去にこんなにも酷いことがあったという事実を知りながら、ドラマ要素とアクション要素とコメディ要素をバランスよく堪能できる本作は本当に素晴らしいです。

〈キャスト〉
キム・マンソプ(ソン・ガンホ)
ピーター(トーマス・クレッチマン)
ファン・テスル(ユ・ヘジン)
ク・ジェシク(リュ・ジョンヨル)
チェ記者(パク・ヒョックォン)
デイビッド・ジョン(ダニエル・ジョーイ・オルブライト)
ウン・ジョン(ユ・ウンミ)

※2022年自宅鑑賞36本目
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