genarowlands

ライオンは今夜死ぬのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

ライオンは今夜死ぬ(2017年製作の映画)
3.8
お彼岸なので。
思っていた以上に好きだった。
やっぱりジャン=ピエール・レオは年をとってもふわふわしていて、つかみどころのないボケ感がいい。
死ぬシーンを演じられない俳優ジャンにとって頑なにイメージしている死と理想の老いがある。撮影の合間に昔の恋人の家を訪れるが廃墟。そこで若くして亡くなった彼女に会い、死と生を語り合う。

目映いコート・ダジュールの陽光と風景の中で美しい亡霊としんみり死生観を語り合うなんてロマンチック!と思ったが、微妙にずれる感じがいい。

映画を作りたい子供たちに出会い、怪しげな風体のジャンは亡霊の妻と会うホラーアクションに駆り出される。

ジャンのむにゃむにゃした感じとカオスな子供たちの組み合わせが絶妙だった。そこに時々現れる昔の恋人の霊だか夢だか。若い頃から½テンポ外すジャンだったが、歳取ったらさらに不思議感が増していた。この空気感すごく好き。どこにも芯がなくて、アドリブなんじゃと思われる、次の行動が予想できない。その混沌(ジャンと霊の夢と子供たち)の三つ巴。

カオスは創造の源。

子供たちが子供らしくていい。脚本はあるだろうが、自然な伸びやかな演技にみえる。

この、子供たちと老人のやり取りの演出に懐かしさや自然な姿を感じるのは、日本人の諏訪敦彦監督だからだと思う。この構成で日本のどこか港町で演じてもピタリとはまりそう。ジャンのふわふわむにゃむにゃした感じは、自我や存在感を消せる山崎努が合いそう。などと思ったり。

ただ、邦画の好きでないところの一つに概念を何かのモチーフで表象化したがるところがある。ライオン要らないなあ。この唐突さは海外で理解されるだろうか。シンボルは文化的背景で読み方が変わる。私は背景を西洋モードで観ていたから、題名のライオンの意味を直感的にも理解できなかった。深読みすればできないこともないけど。

ずっとイメージだけで描いてきての、表象でのまとめはいただけない。

ふわふわはふわふわのままで。

ラストのジャン好き。笑った。やっぱり外してくれた。いいなあ。

📖追記

ロケ地のラ・シオタの町は映画発祥の地の一つと言われている。
genarowlands

genarowlands