このレビューはネタバレを含みます
試写会にて。
突然の家族の死をきっかけに炙り出される其々の孤独。
引きこもりの長男を溺愛してしまった母、どうしていいか分からず突き放してしまった父、母の愛を独り占めにしながら甘えている事に嫌気がさしている妹。
別々の感情を長男、浩一に向ける鈴木家。
しかし、浩一は自殺してしまった。。。
ぽっかりと穴の空いた家族。行き場をなくした感情が其々の中で負のエネルギーとなって充満していく。
言ってしまった言葉も言えなかった言葉も、いつまでも頭の片隅に残り、心を縛りつけていく。
悲しくて、苦しくて、腹立たしくて、悔しくて悔しくて悔しくて仕方がない。
決壊しそうな心と崩壊しそうな家族を繫ぎとめる「優しい嘘」。それは渦巻く負のエネルギーの中で、ギリギリでどうにか絞り出した淡い希望なんだろう。。。
監督のお兄さんも自死されている事実を踏まえると、絶対に消化しなければならない事案だったことが伺える。
ユーモアと呼ぶには余りにも生々しく、笑うことを躊躇ってしまう描写の数々。
その後の遺族の人生をごっそり持って行ってしまう記憶にへばりつくような後悔。
想像を絶する悲しみを映画という創作物を通して、誰かの楽しみにしようという野尻監督の精神には感服する。
本作は妹、富美にフォーカスしている部分が多い、演じる木竜麻生は瑞々しく、見事に複雑な役をこなしている。
深い悲しみを抱えながらも、優しく柔らかな鈴木家の温もりを是非、感じてほしい。
