マクガフィン

君の膵臓をたべたいのマクガフィンのレビュー・感想・評価

君の膵臓をたべたい(2018年製作の映画)
3.9
実写版公開から約1年のインターバルは短すぎて、実写版に引っ張られたり、比較することも。浜辺美波の実写ならではの、演技が持つ力強さの破壊力抜群だったので、鑑賞前はその辺が一番のネックに。原作未読。実写映画鑑賞済み。

実写版でヒロインのイメージが確立しているので、頭を柔らかくして見ようと思いつつも、序盤はヒロインの話し方が、どうしても浜辺美波に似ているのでチラついてしまう。

淡々と展開する模様は、感情によるエネルギーの浪費を拒否する主人公「僕」のクールさにマッチしているようにも。それに対するヒロインの明るさも印象的に。次第に刹那的に渇望する〈生〉の無邪気なパワーに振り回される、微笑ましさも絶妙。

死が刻々と迫る中で、〈生〉を謳歌するような煌めく明るさと、反比例するかのような〈死〉の辛さに切なさ極まる。実写版でヒロインの顛末を知っているだけに余計に辛い。
祭りに行けないことで、花火の背景も季節感を感じることと、一瞬の儚さがマッチして好感。海辺の光も情緒的で、アニメならではの絵の綺麗さが効果的に。

事件後のシークエンスは、アニメならではの抽象化や心象背景により余韻の強さによる儚さが何とも言えない。受動的に振り回されていたが、能動的に行動する「僕」の成長譚を盛り込む上手さも。

実写版の小栗旬の現代パートなどの悪い所を修正した感じも好感。少々セリフ説明的なこともあるが、タイトルや名前に呼応して深みが増すことを、丁寧で分かりやすく描写したことも印象的に。「僕」がヒロインに対するアンビバレンスで矛盾するような心象のメタ的表現で、逃れられない運命と強い感情を同時に抱えて、向き合うことに唸らされる。

流石に浜辺美波のパワーはアニメでは表現できなかったものの、アニメの特徴を活かしたり、吟味された構成や演出は実写より素晴らしく、映画館で鑑賞できて良かった。