Jeffrey

ボイス・オブ・ムーンのJeffreyのレビュー・感想・評価

ボイス・オブ・ムーン(1990年製作の映画)
3.0
「ボイス・オブ・ムーン」

冒頭、ここはイタリアの田舎町レッジョーロ。薄暗い満月と井戸と男。荒涼の地、太った女、野次馬、ライヴ会場、風の運動、屋根上り、妄想、異常性欲、夢想家。今、夢と現実を自由自在に描く…本作は今までにアカデミー賞を4度受賞(名誉賞1つ含み)し、世界3大映画祭の最高賞も受賞してきたフェデリコ・フェリーニの最後を飾る遺作にして傑作の1990年に監督した映画で、この度廃盤のBDを購入して高画質な映像で初鑑賞したが素晴らしい。彼の作品はほとんど見てきたが、この作品はまだ未見だったため思い切って購入。主演は、「ライフ・イズ・ビューティフル」でアカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞した監督兼俳優のロベルト・ベニーニをはじめバオロ・ヴィラッジョ等である。

やはりフェリーも死期が見えたのか、彼の得意とするイマジネーションや映像の魔術師と言われてきた彼の自由自在に描く幻想がこの作品では多く見受けられる。まさしくファンタスティックな1本だ。彼の集大成は個人的には違う作品だが、これも不可思議な世界に誘ってくれる面に関しては、その言葉を使って良いほど狂気的で感動的だ。原作はE・カヴァツォーニの"狂人たちの詩"である。今思えば、彼の作品は全て日本ではメディア化されているんじゃないだろうか。この作品はフェリーニの70歳の誕生日に合わせてイタリアで公開され大ヒットしたそうだが、その年の10月に日本でも公開され評判を得たそうだ。その3年後に心臓発作でなくなっている。

さて、物語はイタリアの田舎町レッジョーロ。ある晩、詩人のサルヴィーニは井戸の傍で不思議な声を聞く。彼はおかしな行動の持ち主だが、子供のように無垢な夢想家だった。オーボエで悪魔の4音を吹く男、満月のように美しいアルディーナ、異常性欲のマリーザと友人ネストレ、妄想に取り付かれた知事ゴンネッラ、様々な人たちが現れては消え、騒動が起きるが、再び静寂が訪れる。そしてサルヴィーニは1人、月に話しかけるのだった。(パッケージの裏表紙の説明の引用)。

いゃ〜、遺作でも喧騒な映画を撮り続けたフェリーニのぶれない姿勢に敬服する。とある男女がセックスをしている際に、風が吹き荒れて煙が充満するあの場面は幻想的で、マイケルジャクソンの音楽を流しながらライブ会場で踊り明かすイタリア人たちのダンス場面も印象的。かわらずのアバンギャルドな作風で、物々しくて騒がしいいろんな登場人物が出てくるのは名前を伏せても一発でフェリーニ作品とわかるような演出である。最後の作品もこのような彼の過去の作品同様にお祭り騒ぎ系の映画で幕を閉じたのは正しく彼の人生そのものだろう。彼の作り出すイメージたちが凝縮された映画と言える。フェリーの作品を多く見てきた人が見れば、非常に楽しめるんじゃないだろうか。
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