千年女優

花筐/HANAGATAMIの千年女優のレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
3.5
戦争への気運が高まる太平洋戦争勃発前夜の日本。アムステルダムに暮らす両親と離れて佐賀県唐津市の叔母の下に身を寄せた榊山俊彦。同じ屋根の下に暮らす病弱で可憐な従妹の美那子やその友人、唐津浜大学予科に通う清廉な美男子の鵜飼や朴訥な青年の吉良と出会いを経て激動の時代に青春を生きる彼の姿を描いた大林宣彦監督作品です。

「戦争を知る映画人」としての立場から『シネマ・ゲルニカ』を標榜するメッセージ性の強い独創的な自主映画を製作する大林監督による「戦争三部作」の第三弾で、過去と現代が激しく交錯する過去二作とはまた異なり、檀一雄の純文学小説を原作に戦時中の青春そのものを晩年の大林監督らしい激しく目移りさせられる映像表現で描きます。

戦争は今も昔も一つの外交手段ですが、文明の進歩と共にそのリスクとリターンの釣り合いが取り難いものとなっていてその要因のひとつに「ココデハナイドコカ」の実現性が増し、個人が国を超える可能性を持ちうる多様性時代の到来があります。世界を放浪した檀一雄による型破りな登場人物達の青春を描くことでそれを表現する一作です。
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