Omizu

女の一生のOmizuのレビュー・感想・評価

女の一生(2016年製作の映画)
4.5
【第73回ヴェネツィア映画祭 国際映画批評家連盟賞】
『ティエリー・トクルドーの憂鬱』ステファヌ・ブリゼ監督がモーパッサンの同名小説を映画化した作品。ヴェネツィア映画祭コンペに出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞した。セザール賞では主演女優賞と衣装デザイン賞にノミネートされた。

素晴らしかった。『ティエリー・トクルドーの憂鬱』も傑作だったがこれもいい。撮影サイズからもうブリゼのこだわりっぷりが炸裂。モーパッサンの原作の豊かさを見事に表現している。

ある女性の悲劇的な運命を辿っていくのだが、過度にドラマチックにせず淡々と語っていく手つきがいい。悲劇ではあるのだが、描写も演出も非常に豊か。

ジュディット・シュムラ、スワン・アルローなど俳優陣もみなこの世界観に合っていていい。特に最低夫を演じたスワン・アルローが気に入った。役としてはダメ男なんだけど、色気があって性癖に刺さる。

ブリゼのクラシカルで丁寧な語り口が素晴らしい。『ティエリー・トクルドーの憂鬱』とは舞台こそ違う時代ものだが、確かに共通するものがある。時代の流れにのまれる人というものを静かに描く手腕は大したもの。

悲劇的な運命ではあるものの、確かにそこに生きた女性がいた。その尊さ。人の一生ってこういうものだよね。

一見地味な作品ではあるが、その背後にある視線の厳しさと暖かさが窺える。画面のすべてが豊か。ブリゼ監督の作品、好きかも。しっかり面白く作家性もある。これからも楽しみにしたい映画作家だ。
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