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ノー・アニマルズ
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『ノー・アニマルズ』に投稿された感想・評価

犬

犬の感想・評価

3.0
未亡人

利益だけを求めるハリウッドにうんざりした俳優が、実験的な映画制作のためアルゼンチンへと向かう

ジョン・キューザックが主演と脚本をやってます


言いたいことは少し分かる

会話

盛り上がりはないです
たぶん配信サービスがなかったら、このようなチャレンジングな作品は、なかなか観る機会はなかったかもしれない。日本では劇場公開されたという話も聞かないし、そのまま配信スルーされた作品だと思われるが、自分としてはたいへん面白く観賞した。これは配信を英断したNetflixに感謝しなければいけないかもしれない。

どちらかというと知性派の部類に入る俳優のジョン・キューザックが脚本にも参加し、主演もつとめている作品。監督のアレハンドロ・アグレスティはアルゼンチン出身で、その後オランダからアメリカに渡り、過去の作品にはキアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックが共演したラブストーリー「イルマーレ」などがある。

アメリカの人気俳優の役を演じるのがジョン・キューザック。彼はハリウッドの胡散臭いプロデューサー(たぶん演じているのはアル・パチーノだと思われる)からアルゼンチンに行かないかと持ちかけられる。キューザックは普段からこのプロデューサーに、いままでと違うことをしたい、もっと成長したいと言っていたらしく、それならアルゼンチンの芸術家から格好の申し出があるとキューザックに強く勧める。実はこの芸術家もどこか胡散臭く、実際に会うと、映画にも出演する予定だというふたりの女性を連れてきており、彼女たちの父親は収容所で殺されたと語る。

プロデューサーの知り合いで脚本を担当するという弁護士と音楽を担当する予定のミュージシャンの3人でブエノスアイレスの空港に降り立つジョン・キューザック扮する俳優。彼は空港でも人々の視線を引き、この国でも名前の知られた俳優だとわかる。たぶん、この俳優役はジョン・キューザック自身と重なっており、いわばこの作品は脚本にも参加している彼の「私小説」のような作品なのかもしれない。

アルゼンチンの芸術家の案内でブエノスアイレスを観光する3人。またもふたりの女性が現れ、映画製作もスタートするかに見えたが、具体的な脚本はいまだできておらず、芸術家もつくるのは別に映画でなくてもいいなどと言い出す始末。その間、3人はブエノスアイレスの街を歩き回りながら、大いに飲みかつ食べ、映画についての議論を繰り返す。ようやく撮影の真似事を始めるのだが、今度はアルゼンチンの芸術家が姿を消してしまう。

物語はざっとそんな流れなのだが、とくに確固としたストーリーラインがあるわけでもなく、作品はドキュメンタリー風に進む。合間合間に章タイトルのようなものが挟まれ、かなり突っ込んだ政治談義も入るあたりはジャン=リュック・ゴダールの作品を思わせる。エンターテインメントというよりは、かなり実験的な要素も強い作品なのだが、語られる映画についての議論やアルゼンチンの政治についての発言などかなり興味深く、また時折挿入される象徴的映像にもインスパイアーされるものが多いため、できれば何回も観たいと思わせる作品だ。

とくに自分はラスト近くの不思議な美意識に貫かれた海岸のシーンが好きで、ジョン・キューザックとプロデューサーが挟むワンコメントが全体を引き締め、最後、3人の女性を相手にジョン・キューザックが発する言葉もぴたりと全体を引き締めている。あらためて、もしかしていたら観逃していたかもしれないこの作品をリコメンドしてきた、配信サービスに感謝だ。
最近ガツンと来る作品ばかり観てる気がするので、ガツンと来なさそうな、薄味なのが観たくて観ました。そういう意味では、もうばっちり期待通り。

政治だの宗教だの哲学だの、登場人物たちが、なんか意味ありげなことを言って、あー分かるかもー、と思わないでもないこともあったりはするのだけど、ゆるーい雰囲気と、一応あるけど、あるんだかないんだかなストーリーの中で、そういうのもなんかどうでもいいー、ってなりました。単に私の知識不足で、理解できてない、とかもあるかも。でもだからといって、そういうことを理解しようとかいう気もさらさら起きない。観ていていろんなことが、安心して忘れていいみたいな感じがある。

嫌いではないです、けれど、わざわざ好き、ってほどでもないです。どっちかっていったら好きよりかな、くらいな。最近濃い作品を観ることが多かったように思うので、いい箸休めになった感じはとてもします。アル・パチーノが、最後無駄に渋すぎるのがなんかツボでした。