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メディアが沈黙する日のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

メディアが沈黙する日(2017年製作の映画)
4.3
プロレスラーのハルク・ホーガンがプライバシーの侵害を理由に、米ゴーカー・メディア社を相手に起こした訴訟問題。報道の自由を守る闘いへと発展したこの一件は、お金に物を言わせてメディアを封じ、報道の自由を奪った裁判として歴史に名を残しました。ブライアン・ナッペンバーガー監督作品「メディアが沈黙する日」は、不平等社会で脅かされる報道の自由と責任について検証します。
きっかけは、ハルク・ホーガンが親友の妻と肉体関係にあったことの証拠になるプライベートビデオを、ネットメディア会社ゴーカーがすっぱ抜いたこと。ハルク・ホーガンがゴーカーをプライバシーの侵害で訴え、芸能人のプライバシーをどこまでオープンにするかが焦点になった。問題は、ハルク・ホーガンがラジオなどで自分のプライバシーをしょっちゅうぶっちゃけていたこと。そこを裁判官に突っ込まれると、プライバシーをオープンにしているのはハルク・ホーガンで、ハルクから個人に戻ったらプライバシーはオープンにしていないと、訳のわからない理屈で、裁判官を丸め込みホーガン側が勝訴する。破産寸前のホーガンの裁判費用を負担したのは、ネット決済会社ペイパルの社長ピーター・スティール。ピーターは、かつて自分の性癖をゴーカー社にすっぱ抜かれ、復讐の機会を狙っていた。ドナルド・トランプは、大統領選挙中に自分に批判的な報道メディアのブラックリストを作り、大統領選挙の取材を許可しなかった。
大統領になったトランプは、自分に批判的な報道メディアや報道記者やキャスターの質問に答えなかったり、報道メディアをウソっぱちを広げていると批判して、自分の支持者に報道メディアに敵意を向けさせるように煽る。ラスベガスのある報道メディアをシリコンバレーの金持ちが買収しようとしたように、アメリカでは力ある者が報道メディアを買収や恫喝する報道の自由を脅かす状況が、強まっている。
日本でも、官房長官に鋭い質問をして総理大臣の疑惑を追及する東京新聞の記者だけを、官房長官に対する質問の数を制限したり、恫喝するような答え方をするなど、報道メディアに対する圧力が強まっている。
この映画は、報道の自由の危機という今そこにある危機を知るのに、もってこいのドキュメンタリー映画です。
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