シカク

バッド・ジーニアス 危険な天才たちのシカクのレビュー・感想・評価

3.8
初見のタイ映画、そしてカンニングを題材にした作品というのも初めて観ました。

特待奨学生として転入した学校で、仲良くなった女の子に持ちかけられた冒頭のカンニングのシーンが、想像よりもめちゃくちゃスリリングかつアクロバティックな要素を含み一気に掴まれた。ともするとコミカルになりそうな所だが、あくまでも本気でカンニングを遂行させようとする気迫が主人公達から漲り、なんなら自分もカンニング一味に加わっているかの様なシリアスなハラハラ感が素晴らしかった✌🏻
もっとデジタルな要素も重なってくるのかと思ったけど、やり口は特殊な所もあるがアナログで自力感があり所謂カンニングしてんなと内心つぶやいた。

実際の件もしくは複数の事案を参考にして一つにまとめたかはわからないが、中国や韓国もカンニングが問題に上がったことがあるみたいで、それらと創作が合わさった感じかなと推察しました。
タイはかなりの格差社会で貧富の差が凄いみたいで、貧しい主人公のリンとカンニングで答えを授かる裕福な友達といった具合に、社会問題に根差した側面もしっかり描かれています。

「私たちは生まれついての負け犬 人より努力しないとダメなの」
時代が流れデジタルが普及しそれに管理される昨今でさえ起こりうる、カンニング=不正という人間の欲望と欺瞞に巻き込まれ染まっていくリンを通して格差社会という歪んだ社会構造を浮き彫りにさせ、そしてもう一人リンとは対照的なバンクがその辺りのテーマに切り込んでいって上手く作用し、作品の作りに貢献しているなと感心しました。
 
映画作品で取り上げるには小粒かなと思われるカンニングという題材も、社会に目を向けさせ国際的に広げる「高校生のオーシャンズ11」と謳われるダイナミックな展開の演出で作り手の才気を振るうには十分で、要注目の気鋭の映画作家ナタウット・ターンピリアのこれからに期待したい。
シカク

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