O次郎

ブッシュウィック-武装都市-のO次郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

故郷の街に帰省した女子大生が、焦土と化した街と正体不明の武装部隊に遭遇する。

敵の武装部隊と町の住人との戦闘や暴徒に襲われながらも、途中で出会った元軍人の屈強な男性とともに家族を探しつつ脱出を図るが、物語の真ん中あたりで敵兵を捉え、その正体と目的を知ることになる。

一部の州が米国から独立して新たな国を作る...というのがその核心。
あながち荒唐無稽とも言い切れず、奇妙なリアリティが有るのが物語としての魅力であろうが、物語はサバイバル劇としてその後も進行し、非武装地帯への脱出を試みるも結局は主人公もその妹も相棒の男性も敵方の兇弾に斃れ、抗争の混沌の継続を匂わせて幕を閉じる。

結末自体はそれもあり、だとは思うが、画として気になったのが主人公のキャスティング。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラッグスでお馴染みのデイヴ=バウティスタが壮年の屈強な男性なので、主人公はそれと対比させるようにより年若く健気で非力な、女子高生ぐらいの女性が良かったのではないかと思う。
ブリタニー=スノウ演じる本作の主人公は大学院生の女性ということで微妙に歳を食っており、見た目としてもさほど若くないため、二人揃っての画のコントラストがイマイチである。
第一義的にサバイバル劇なので、「非力な人間も懸命に生を得ようと足掻いている」という展開にこそ共感が生まれうるのであって、かの名作漫画『北斗の拳』のサブキャラクターの少女リンが子供の頃はよくキャラが立っていたのに後篇で大人の女性になってからは魅力がどうにも薄れてしまったのに近い印象かもしれない。

また、テロで息子を失った屈強な相方男性が軍に志願し、イラクで戦争の虚しさをつくづく感じて争いに心底嫌気がさした、という設定なので、それと対比させるように生命の極限状況に在る主人公の非力な女性が次第に好戦的になっていく...という構図をとれば「力の皮肉」も巧く描けたのではないかと惜しい気持ちになる。

「多民族国家や、膨大な数の人間を一つに束ねるイデオロギーの脆さ危うさ」という意味合いでは中国や、ある意味ではEUなどの連合体への警鐘作として、説教臭くない娯楽作の形で提示し得るかとも感じたので、尚のこともう少し内容を練れば佳作となり得たのではないかと感じた次第。
O次郎

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