鰹よろし

エクリプスの鰹よろしのレビュー・感想・評価

エクリプス(2017年製作の映画)
2.9
 父は亡くなっており母子家庭。夫を亡くしたことでの経済的な面か精神的な面かで母は働きづめで家を空けがち。家にいても活動の時間帯が異なる様で、家の中において家族水入らずで顔を突き合わせることはほとんどない。思春期真っ盛りだろう長女であるヴェロニカがキョウダイの母親代わりを務めている。自らも大人へと成長する傍ら何かと大人の助けを必要とする年頃。思春期特有のもっと自由を謳歌したい気持ちと、それを赦してくれない環境とで鬱憤を晴らす機会も無く募るフラストレーション。親御さんに付き添われ登校する子どもたちに、友達同士で登校する若者たちに紛れ、兄弟を引き連れて登校するオープニングはそんな彼女の立場(板挟み)を如実に物語る。

 そんな彼女にとっての唯一無二のやっと掴んだ自分の時間。届いて欲しい人には一向に届かなかった心の叫びが、そのほんの一瞬の過ちでナニカに届いてしまう。独り頑張ってきたヴェロニカへの報いがこれか…と嘆かわしくも思うが、そんな心の隙間に付け込んでくるナニカを際立てることで確かに存在した彼女の孤独もまた露わになる。これはヴェロニカという少女へと向けた鎮魂歌だ。
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