1944年の作品だが、バランスの良い幕末グラフィティに仕上がっていると思う(下関砲台がらみのカットなんかはあーいかにも戦時下の作品だなって思うけど)。あと練兵館の出来事以外にも結構幕末の要所要所をピックアップしていて、吉田松陰処刑前後はちょっと中弛むが、以後はそこまで描いてしまうんかいって感じでテンポよく進む。

牛原監督の演出も剣のクロースアップとか蛍とかなかなか見飽きないし、豪快な動きの羅門光三郎とイカニモ剣道有段者って感じの月形龍之介の剣さばきも見もの。殺陣シーンは複数回あるがどれも違った味わいになっていて一つ一つが激アツ。

だがこの作品の一番の見どころは荒木忍ではないだろうか。役回りといい演技といいもうバンツマとのダブル主演でええと思う。七人の侍の志村喬みたいに。戦後の東映時代劇なんかでは、このポジションが奇しくも映画では門弟役の月形龍之介に継承されていくのですね。