出 た よ ! !
パ レ ス チ ナ 問 題 ! !
ごめんなさい。
日本にいると貴方達の痛みをなかなか解る事が出来なくて。毎度調べては忘れてしまう、ぼんやりした東洋人の僕を許したまへ。
1948年のイスラエル建国により、70万人以上のパレスチナ人が故郷と家を失って、ヨルダン川西岸地区、ガザや、ヨルダン、レバノンなど周辺諸国に逃れた。今やその数、世界中で約560万人。
「故郷への帰還」を切望しながら、70年以上も難民として過ごしている現実。
この作品、根底にあるのはこの問題。
舞台はレバノン。
法廷で争う2人の男。
青コーナー。
自動車修理工場を経営するトニー・ハンナ。彼はクリスチャンで、パレスチナ難民排除を訴えるキリスト教系の政党の献身的なメンバー。
赤コーナー。
街の建物の修繕事業を請け負う業者で、労働監督として働くヤーセル・サラーメ。彼はパレスチナ難民。
最初は些細な行き違いだった—— 。
第1ラウンド。
トニーのベランダから街路に向けて突き出た排水管が違法であると、ヤーセルはトニーに修繕を申し出るが、彼に断られてしまった為、勝手に修繕してしまう。腹を立て、新しく取り付けられた排水管を壊したトニーに対し、ヤーセルは罵声を発してしまう。
第2ラウンド。
雇用主に諭され、トニーの元に謝罪で訪れたヤーセル(←本当は謝りたくない)。しかしトニーは、パレスチナ人を侮辱する言葉を発し、それに激昂したヤーセルはトニーの腹を殴り、肋骨を2本折ってしまう。
人種、思想、歴史を蔑む暴言。
それに対し、咄嗟に抵抗する為の暴力。
果たしてどちらの罪が重いのか。
ほんの小さないざこざが、国家を揺るがす程の裁判沙汰に。
互いの弁護士が父と娘で、親娘対決という構図も面白い。
事の発端が日常的なトラブルなので、民族問題に疎くても十分惹き込むだけの求心力が、この作品にはある。
裁判で争いながらも、その帰り道、車のエンジンがなかなかかからないヤーセルを助けてあげるトニーにはほっこりするけども。
歴史的背景をもっと知っていれば、更に心抉られる作品なのは間違いない。
このどちらかの当事者だったとしたら、
この裁判の行方を冷静に見れただろうか。
最終ラウンド。
トニーにも、誰にも言えない暗い過去があった事が法廷で明かされる。
誰もが傷を負っている。
どちらが善で、どちらが悪だと
断罪するのは難しい。
皆んなが加害者で、皆んなが被害者。
そして迎えた判決の日—— 。
気になる判決結果は、是非ご自身の目で。