エリンギ

判決、ふたつの希望のエリンギのネタバレレビュー・内容・結末

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

映画館で観たときにかなり気に入った作品
家でも観たら、やっぱり素晴らしい
話に無駄がないし、展開が早いのにわかりやすい

みんなそれぞれの事情や苦しみがあるし、それによってときどきは間違ったことをする
非を認めたくないっていう意地もある

欲しかったのは相手の謝罪だけだったのに、話はささいなつばぜり合いからどんどんかけ離れてしまう
弁護士に依頼したとたん大ごとになり、民族の争い、社会現象にまでなってしまって、ふたりの困惑ぶりが見てとれる

トニーの弁護士がとにかく嫌な感じのする人で、裁判ではふたりそれぞれの過去の古傷まで暴露したりして、当事者たちはとても辛そうだ
人物像を明かすためにという名目で、日本ではこんなことしないよなぁと思った

はじめトニーは嫌なやつだと思ったけど、自分も悪かったんだって言い始めたりして、そんな悪い人じゃないんだってことが、だんだんわかってくる

途中とっくに相手を許し合っているのがわかる車のエンジンのシーン
トニーはいったん去りかけたのにバックミラーで見て戻ってきたっていうところが自発的だし、シンプルな親切心を感じる
そして手助けをしたあとも、特に会話もない、ここはとても心に染みるシーンだった

こっちだって悪かったんだ
こんなことになってしまうなんてね
そんな心が透けて見える
ふたりは少し気まずそうで、かえって優しさが伝わってくる
ふたりともまっとうな人なのだ

あの憎たらしい親父弁護士は結局、冷静で適切な仕事をする娘弁護士に負けたけど、そのときの清々しい表情を見ると、娘に負けたことがむしろ誇らしげでもあった
この人だって悪い人じゃないんだな

トニーとヤーセンも軽くアイコンタクトをして、信頼関係すら生まれているみたいに見えた
そういう清々しさのある終わりだった

みんなそれぞれの事情で動いているだけで、実際のところ悪人は一人も出てこなかった

人と人との関わりはこじらせると解きほぐすのが難しい
人種が違う、民族が違う、ということならなおさら

けれどもそれと同時に、深い人間愛が伝わってくる映画でした