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劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-のodyssのレビュー・感想・評価

3.0
【娯楽作品ゆえの甘さ】

私はテレビをほとんど見ない人間なので(映画放送を録画してヒマな時に見るくらい)、この作品もテレビ版はまったく見ていません。あくまで映画ヴァージョンのみでの評価です。

それで言うと、いちおうそれなりに迫力はあるし楽しめるようには出来ていますが、娯楽作品ゆえの限界が感じられると言うしかないような。

つまり、この映画は一方で医療者の労苦を描いているわけですけれど、他方で医療を介して家族関係を描いているわけですね。そういう点で見ると、劇の作り方がすごおく甘いというか、微温的。

その最たるものは、アル中の母親と、その娘2人の関係でしょう。ああいう風に「よかったですね」風に終わるのは、この作品がいかに甘いか、予定調和的に作られているかの証拠でしかない。あの設定だと姉は母親依存ですから、あくまで母親の面倒をみて、母が死んだら自分も・・・になるしかないんじゃないですかね。女同士の、つまり母娘関係とか姉妹関係って、こんな綺麗事じゃ済まないと思うな。それが綺麗事で終わっているのは、この映画が要するに突き詰めた脚本をもとにしていないから。

父に虐待されて児相に逃げ出した男の話だって、同じでしょう。ふつう、ああいう父親には絶対会いませんよ。そもそも、こういう「毒親」は、児相に預けられたわが子がアルバイトをして大学進学資金を貯めているのに、「俺は親だ」と言ってその貯金を勝手に持って行ってしまうような、どうしようもない人間なんだから。(疑う人は、その方面の本を読むように!)

つまり、この映画に見られる家族間は、すごおく甘いんですよね。きっと、恵まれた家族で育った人が作ったんでしょう。

世の中、こんなに甘くできているなら、生きるのはすごおく楽。この映画を見て感激している人は、楽に生きてきた人なんでしょう、多分。

ああ、それと、最初に作品登場人物の紹介コーナーがあるけれど、すごおく不親切。テレビでこの作品を見ていない人間(=私)には何がなんだか分からない。これまた、制作側の独りよがり、つまり自分を客観視できていないことの証拠ではないかと。
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