うえびん

モリのいる場所のうえびんのレビュー・感想・評価

モリのいる場所(2018年製作の映画)
3.8
アリの棲む場所
魚の棲む場所
鳥の住む場所
石ころのある場所
モリ(守一)のいる場所

超俗、脱俗、世間を離れた画家と妻、その周りの人・生物・無生物が、人の目・虫の目・鳥の目で描かれる。日常をスケッチしたような作品。

守一が、人間社会と自然の“あわい”を生きる様子が印象的だった。

また、守一と世間をつなぐ妻の立ち居ふるまいも絶妙。洗濯物を干したり、碁石を片付けたり、なんてことのない仕草がなぜかフワッと心に残る。この作品の公開年(2018)に亡くなった樹木希林さん。山崎努さんは、俗と聖、守一の空間の超俗を演じていた。樹木希林さんは、守一の俗と聖をつなぐ役を演じながら、この世とあの世、時間の超越を生きていたんじゃないだろうか。

ミネルヴァの梟は夕暮れに飛び立つ。

物の豊かさが、人の心の豊かさに結びつかないことを多くの人が実感するようになった現代だからこそ、モリの生き方や暮らす世界にいろんな意味を感じ取れるのかな。夫婦二人の姿を眺めているだけで、あったかい気持ちが湧いてくる不思議な作品でした。
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