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モリのいる場所のゆずのレビュー・感想・評価

モリのいる場所(2018年製作の映画)
4.0
30年間自宅の庭の生命を描き続け生涯現役を貫いた画家・熊谷守一。その晩年はこうだったかもしれない…みたいな感じで、とある一日が描かれる映画。
鬱蒼とした庭を徘徊し、そこに溢れる草花や虫などの生命を見つめ続ける仙人じみた老画家モリ。彼にとって庭は小宇宙であったという。そんな彼を取り巻く人々、奥さんやお手伝いさんや、モリを訪ねてくる様々な人たち、ここには監督・沖田修一の独特のユーモアの「間」というか、ゆっくりだけど笑わずにいられない感じがしっかりとある。熊谷守一の小宇宙を沖田修一の世界が包み込む。

この映画でモリの妻を演じた樹木希林は9月15日に亡くなり、私にとっては「生きている樹木希林さん」を見た最後の作品がこの映画となった。彼女の遺作は今後公開されるのだが、訃報にふれた以上、これ以降は過去作も含めて「もう亡くなってしまった樹木希林さん」という認識で見てしまうことになる。なかなかに寂しいことである。年配層になって以降の老婆役の演技しか知らないのだが、外孫で祖母とは疎遠だった私は、樹木希林に第三の祖母のような妙な親近感を抱いていたかもしれない。映画を見返すたびにまた会えるだろうか。ご冥福をお祈りしたい。



7/18 モリのいる場所 @フォーラム仙台
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