Mashirahe

ジョン・ウィック:パラベラムのMashiraheのレビュー・感想・評価

3.8
アクションの量と質の合計で競う大会があったら、おそらくこの映画がぶっちぎりで優勝すると思う
3作目になりシリーズの特徴であるスローモーションや細かいカット割を廃した誤魔化しほぼ無しのアクション演出には更に磨きがかかり、一切の混乱なくジョン・ウィックの死闘を堪能できる
アイディア、ロケーション、シチュエーションもより一層豊かとなって、かっこいいセリフ回しや絵画っぽい画面作りも健在だ
欠点とも言えるのはアクションの純化が更に進行しているということ
例えばクライマックスがせっかく籠城戦になるのであれば、ブービートラップや咄嗟の機転、そして最後は騎兵隊の到来などがあれば嬉しいかも、と考えるのがまあ普通の観客だと思う
しかし、ジョン・ウィックシリーズにとってそれらの要素はすべて"無駄"なのだ
ジョン・ウィックが銃を「どっさりと」持って敵をボコボコにするという要素が重要であり、それ以外を削ぎ落とし純化していくのがこの映画だ
そして要素の拡張を試みた結果、頑丈すぎる防弾装備のため弾を「どっさりと」撃ち込まなければ死なない敵の登場という異形の進化を遂げることとなった
この進化の方向性は敵を射殺するタイプのビデオゲームにおける終盤や高難易度における調整と極めて似通っているのが面白い
銃を撃ちまくりたい、という欲求が共通しているがゆえに同じ姿に進化したのであろうと考えると、この映画が何を求め、どこを目指しているかがよくわかるような気がした
やたら長々と戦ってくれるシラット使いの人たちや日本人?の隠す気のない接待感もまたアクションを純化させたがゆえのことと考えると筋が通る フラフラのジョン・ウィック、あるいはキアヌ・リーブスにファンだと述べ破顔し手を差し伸べるシーンは清々しいまでのスタンス表明に思える 彼らはストーリー上の立場以前にアクションに殉ずる仲間なのだ
このアクションのみに特化した映画という構造は、ある種殺人のみに特化したジョン・ウィックの人物像と重なる点があるように感じる
彼は妻という"無駄"を手に入れ人間となり、失ったことで戦い続ける怪物となったが、このシリーズの進化はどこに帰結していくのか 明日の鑑賞がより楽しみとなった
続夕陽のガンマン、しかもブロンディじゃなくてトゥーコのオマージュがあるのは良かったな 装置としての機能は前者に似てる気がするけどあえての後者 巻き込まれ型とか過去の罪に追われてるのが似てるのかな
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