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ターミネーター ニュー・フェイトのZUSHIOのレビュー・感想・評価

2.8
ジェイムズ・キャメロンは『ドラえもん』を下敷きにして『ターミネーター』を作ったと勝手に思ってるのだが、「3」以降(「4」を除き)、「男はつらいよ」のごとく、その「ドラえもん」フォーマットから全く抜け出せず、同じことを繰り返しているので、ストーリー的につながらず破綻していくシリーズとなってしまった。
映画としては、どう考えても『ターミネーター 上・下巻』で「2」で完結すべきであったことは間違いない。
ジェイムズ・キャメロンの作る作品自体も実は、物語構造が良く似ていて、『ターミネーター1』と『タイタニック』すら、一晩で出会った男女が恋に堕ちながら、生命のピンチに見舞われる(T800か沈む豪華客船かの違い)という構造でよく似ている。
なので、やはりキャメロンが製作に関わったとしても、この『ニュー・フェイト』もデジャブ感満載の作品であった。もちろん『男はつらいよ』を観て「また寅さんがマドンナに振られている!金返せ!」という人が居ないように、定番アクションを求めるのならば、スコアは4.8ぐらいに上がるが、残念なのは「ターミネーター」が人間VS機械(人工知能)という現代社会の切実な問題を物語の中に内包していながら、それらを現代社会に合わせて何らアップデートできていない点なのである。
2019年に製作された本作でさえ、未だメキシコ工場内での機械化による失業を扱っているが、いつの時代認識だよ!という話。マッケンジー・デイヴィス演じる「グレース」が半機械強化人間というアイデアがあるのだから、結局人間が、機械やAIと二項対立で戦争して勝って、問題解決できるような単純なものではないことを象徴するキャラクターになれたはずだし、何しろ、プログラミング書き換えもせずに、人間と接しているうちに人間と同じような感情を持つことが出来るようになったT-800(カール)こそが、ダニーが救世主うんぬんの問題ではなく、機械軍と共存する道のヒントになったのではないだろうか?
というような、完全にAIを敵視して、切り離すことが出来なくなっている現代社会をうまく、メタファーに取り込んで作品化することが出来たなら、優れた作品になっただろうに、T3以降はただ単純にストーリーの奇抜さと、車がどれだけ吹っ飛ぶかというアクション重視の方向性に行ったことがこのシリーズ最大の誤算だったのだろう。
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