ZUSHIO

オッペンハイマーのZUSHIOのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
事前に予習は(ネタバレでも良いから)必須の複雑な構造ながらも、簡単には理解させまいとするところに、逆に誠実さを感じた。
前半はオッペンハイマーがいかに、俗物的というか、共感性の欠ける「凡庸さ」を持っているのかが描かれる。ハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ」をも思わせるし、この映画の予告編の中に流れた『関心領域』とも共通するものを感じた。
トリニティ実験は、映画の山場なのだろうけど、やはり日本人としては複雑な感情で観ざるを得ない。
映画の構造として、ロバート・ダウニー・Jr.演じるストローズの男の嫉妬とかどうでも良いから、白黒実写で『この世界の片隅に』的な映像との交互構成の方が良い映画になったんじゃないだろうかと(日本人ゆえに)思った。

また、音楽も良いけど、1999年にオペラLIFEでオッペンハイマーの例の台詞をサンプリングしていた坂本龍一教授が担当していたら…などとこうしていたらの夢想が先走る映画体験となったが、そうした妄想が広がる映画は優れた映画の証左なのだろうとも思う。
ZUSHIO

ZUSHIO