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運命は踊るのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

運命は踊る(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

戦死報告された息子を巡るミステリー。

グラフィカルな語り口に特徴のある作品で、監督自身が「台詞には頼りたくない」とインタビューで語っていましたが、その言葉通り、視覚的な刺激に溢れた作品になっています。

役者の演技だけでなく、背景に映るものや、画面の構図などで、キャラクターの人間性や感情を表したり、メタファーによるテーマの暗示など、非常に読み解きがいのある作品と言えるでしょう。

個人的には戦地にいる息子の日常描写が印象的でした。
まるでディストピアSFを見てるかの様な、空虚さと幻想的な雰囲気があり、それでいて、詞的で絵画的な映像世界は、サミュエル・マオズ監督のただならぬセンスを感じさせます。

物語的にはタイトルにある通り、“運命”というのものの、理不尽さ、抗えなさ、輪廻を描いている様に感じました。
本当に些細な事が生死を分けてしまったり、死から離れようとしたら、死に近づいてしまったり、ちょっと笑ってしまう様な死の呆気なさだったりと、そういう運命の残酷さや逃れなさを描いています。

ただ、本作はそんな運命論を振りかざすだけではなく、父親の見せ掛けだけのマチズモ性…所謂、有害な男らしさに囚われてしまった彼を解放させる事で、運命からの解放という希望を描いている様にも感じました。
悲しみや弱さを無理に隠すのではなく、オープンにして他者と共有する事で、人は運命の踊りから外れ、新たな一歩を踏み出す事が出来る。
そうして1人1人が解放されていった先に、人類は戦争という運命から解放されるのかもしれません。
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