RY

パンとバスと2度目のハツコイのRYのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

恋愛がテーマではあるのだけど、いわゆるラブコメディのようなドタバタは無く、優しい温度感で包まれた映画。大きな展開がない代わりに、より深く哲学的な色彩を帯びている。スクリーン上の現象としては本当にミニマルなことしか起こらないからそういう意味では盛り上がりに欠けるのだけど、伝わってくるものは少なくない。
本文以上にその注釈が充実した本を読んでいる感覚に近い。反芻することが求められる映画。それが良い手法なのかは分からないけれど。

・ふみのキャラクターがいい。ふみを演じる深川麻衣がいい感じの普通っぽさを醸し出しているのだけど、やってることはなかなかの変人。
バスの洗車を見るのが趣味。
携帯を携帯しない。
朝焼けが見たいからパン屋に就職。
友人の言われるままラブレターにくるりの東京を引用 などなど。

・洗濯機が壊れたシーンが印象的。二胡が帰ってきた時の、途方に暮れてしまったようなふみの佇まい。時が止まってしまったような空気感、「洗濯機壊れちゃった」と言う彼女の孤独感たるや。このシーンの演技・演出は素晴らしかった。

・冒頭で、ふみの目から目薬が溢れて頬を伝うシーンも良かった。このシーンも無表情でありながらどこか物悲しさを感じさせる

・ふみとたもつの関係性と並行して、「孤独とは何なのか?」という問いをめぐって映画が進んでいく。考えてみれば、人と関係をとり結ぶことと孤独であることは表裏一体であって、この取り合わせは自然であるのかもしれないが、しかし作中でその位置付けが明示的に示されない以上、解釈の仕方に悩む部分でもある。

気になったところ
・全体的にライティングがのっぺりしてるというか、nhkっぽい。伊東から帰るシーンとか、もっとやりようがあったんじゃないかなと思う。
・深川麻衣の演技がちょっと「お芝居」っぽくて、気になるところがある。演出に左右される感じ。コメディとか、空気感が設定されてる作品の方が向いてそう。「the 普通」(もちろん尋常じゃなく美しいのだけど)な佇まいは素晴らしい。
RY

RY