dm10forever

ダウンレンジのdm10foreverのレビュー・感想・評価

ダウンレンジ(2017年製作の映画)
3.6
【和製グラインドハウス】

う~~~~ん。
ぶっちゃけ、観終わった直後は「何だ?」っていう感覚。

ストーリーもキャラの深堀も全部すっ飛ばして「事件」だけに一点集中した物語なので、単純と言えば単純なんだけど、登場人物がどういう人たちなのかもわからないのでイマイチ感情移入も出来ないままラストまで突っ走ってしまう。

(結局これは何やってん・・・・・)

だから、観終わった直後は複雑な心境になりますわな。
「面白く・・・ない・・・こともないんだけど。でも何か足りない・・・」っていう。
そんな感じでレビューもどっち側で書いたろかと悶々としたまま、ちょっと寝かせることにしました。

そしたらね。
やっぱり「2日目のカレー」みたいに、ちょっとずつ熟成された感想もポツポツと浮かび始めて・・。

これは決して「無し」な作品ではないんだけど、思いっきり監督が遊んでる作品なので、恐らく評価はパックリ割れるだろうなと。

そもそも北村龍平監督の作品って、「あずみ」くらいしか観たことないから、何系が得意な監督なのかもよく知らないんだけど、少なくともこの作品を見る限りでは「あ、こっち系?」と感じてしまった。
ストーリーは度外視で、徹底的に見せたい映像に拘って作りたいんだけど、恐らく日本では色々と難しかったからアメリカ行って撮っちゃおう!っていうノリの一作。

「アホな大学生たちのお気楽ドライブ」については日本でもOKだけど、「ライフルで狙ってくるスナイパー」「他の車が通る可能性がほぼ0の荒野の直線道路」「スマホの電波が通じない」「警察がショットガンで応戦」「親が退役軍人だから銃器に詳しい女の子」・・・こんな設定は日本なかなか成立しない。

だからこそこういう「グラインドハウス」っぽい王道のB級映画には、それが成立するバックグラウンドが必要であって、それが今作でいうアメリカだったという事なのかもしれない。

そう考えれば「やりたことが出来る場所」で「やりたいことをやった」という、いたって筋の通った映画なのかもしれない。
(重ねて言うが「面白いかどうか」は別として)

――6人の大学生が相乗りし、広大な山道を車で横断していると、タイヤがパンクする。タイヤ交換を担当した男は、パンクはアクシデントではなく、銃撃を受けていたことに気づく。その時、既に彼らは「何か」の標的になっていた・・・(Filmarksのあらすじより)――

このあらすじを読むと「何が起きるんだ?」とか「犯人は何者なんだ?」とか色々と想像は膨らむんですよ。
でもこの映画の凄い所は、映画本編で描かれる「筋」は、このあらすじ以下なんです。
あらすじに書かれている情報の方がよっぽど親切で、実際の本編では彼ら6人がどういう関係性なのか?犯人は何者で何が目的なのか?等々についてはほぼ触れられません。
犯人に至っては最後までフルでビジュアルが映し出されることもありません(一応映るけど、暗闇なので殆ど判別不可)。

だからね、ネタばれフィルター掛けようかとも思ったんだけど、フィルター掛けるほどもないかな・・・という気もして・・。

ただグロシーン(人体損壊シーン)は結構力入れてるなっていう気はした。
まぁあれだけ威力のあるライフルで狙われたら、そりゃ人間なんてそうなるわな・・・っていう。
ただ、良くも悪くもそれがメインの映画なので、色んな展開や仕掛けを期待して観るとちょっと肩透かしになるかもしれないけど、ある意味では最期まで一貫して絶望的な状況ではあるので、とりあえず解決まで行くには行くんだけど、胸糞映画としてはまあまあの終わり方なのかもしれない。

動かない場面の中でのジリジリとした雰囲気とか、アメリカ特有の「乾いた質感」とか、登場人物たちの個性は知らないけど、恐らく全員に流れているであろう「アメリカンな血」がさせる「アメリカンな発想に基づくアホな行動」とかは、アメリカで撮ったからこそ出せた味だと思う。

好意的にみれば、あらゆる無駄な要素を削ぎ落とし、あるいは肉付けもせずにとことん「画面に映し出されるパニック」を一緒に追体験してくれ!っていうタイプの作品なので、そういった意味では先に書いた「ストーリー」や「キャラの深堀」もあえてしなかったのかな・・っていう気はする。
何が何だかわからないまま、恐怖に突き落とされるっていう感覚を描きたかったんだろうと。

ただ、如何せんスナイパーにそれ程「サイコパス」を感じないんだよな・・・
いや、やってる事は十分サイコパスではあるんだけどね(笑)
なかなかのスピードで走っている車のタイヤを一撃で撃ち抜く腕がありながら、他のシーンでは結構無駄に外したりもするし、目的がない割には相当な数の人を殺しているっぽいフリがラストにあったけど、そんなに人を殺していたらとっくに警察が動いているはずだし・・・結構設定というかキャラクターにブレがあるなぁ・・と突っ込みどころもなくはない・・・。

今作は、テキサスチェーンソーのような『どこまで逃げても得体の知れないモンスターが追ってくる』っていう設定を180度ひっくり返して『何処にいるのかわからないモンスターから逃げるに逃げられない』という「場面の動かないパニック映画」。

動かなければ助かるのか?と言えば決してそんな事もないし、そもそも犯人がどこにいるのかもわからない(もしかしたら移動しながらこちらを狙っているのか?っていうか本当に一人なのか?とか)。
ほぼ無名に近い俳優しか出てこないので、いい意味で「全員に死亡フラグが立っている」ような状況も緊迫感に繋がっていたと思う。

この作品だけではあまり評価は出来ないんだけど、結構こだわりの強い監督さんなのかな・・・っていうことは伝わってきた。

まぁ今は無理だけど昭和なら案外OKだった「ちょっと刺激強めな午後ローテイスト」って感じかな。
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