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マリア・ブラウンの結婚の8Niagara8のレビュー・感想・評価

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)
4.5
映画的なるものの権化。

終始皆に俗人的な狂気が見え隠れしながらも、最後ヘルマンがカナダに旅立ってマリアの表層に一気に顔を出すその様は鳥肌ものであり、正に演出の妙であった。
彼女の周囲に様々な男を配し、さらには女もコントラストを描くものとして置く。マリアの輪郭を形成するものとしての彼ら。

途中まではマリアや自分たちの背後にあるものを看破した存在としてのヘルマンが見られたが、それを踏まえてもラストシーンの素晴らしさ。諦観漂う張り詰めた雰囲気から一気にカタルシスへ向かう。

戦後ドイツの混乱において、場当たり的ながらも逞しく幸せを追い求めるマリアの生き方は見ていてとてもヒリヒリする。
一方で、結婚に生き続けたとも言え、そこには何か通底するものが。
側から見ればある種自己本位的にも見えるが、彼女が生きることに対する賛美的な態度は認めざるを得ない。

構図が本当に美しく、惚れ惚れする。
登場人物の目、視線を捉えたショット。これもまた他者存在を浮き彫りにする。
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