トレバー

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。のトレバーのレビュー・感想・評価

4.3
まず、邦題が微妙なんですよね。
IT。「それ」が見えたら終わり、のそれって
邦題だとペニーワイズのみにかかりますが、
本作においての「それ」って、登場人物
それぞれ違うんですよね。

弟と遊ぶ気にならなくて仮病使ったために
弟を死なせてしまった罪悪感だったり、

過保護どころか支配している母親だったり、
性的虐待を止めない父親だったり、

自分が性的マイノリティだという悩みだったり、

容姿から拒絶され暴力を受ける恐怖だったり、、、

「それ」に囚われ恐怖する子供達につけ込み、
ペニーワイズはやってくる。
子供達の不安や恐怖を食べてペニーワイズは生きている。
27年周期には色々設定があるようですが、
それはストーリー上の展開で都合が合うだけなんで
それほど重要ではないでしょう。

前作は、悩みを持った子供達が負け犬チームを
結成して恐怖に立ち向かう事でひとまず勝ちましたが、
とどめを刺す事は出来ませんでした。

27年経ち、負け犬達は呪われた街を離れそれぞれ
人生を歩んでいましたが、トラウマは解消されたわけではなく
街から離れた事で街の記憶とともに忘れた気になっていましたが
実はそれぞれトラウマに引き摺られていたのです。

脚本の内容は評価されていても、ハッピーエンドは書けない。
弟の事がどこかに引っ掛かっているから。

支配する父、母から逃れても結局似たような
パートナーを求めてしまう。

街から離れると記憶が薄れるという設定は、
上手いと思いました。
忘れるという事は、思い出す可能性があるという事。
各々がトラウマにけりをつけていなければ、
「大人」にはなれないという事。

「それ」に向き合うための長尺なんです。
怖くないなー、とか前作の繰り返しだなー
という気持ちで観ていたら、そりゃあ退屈かもしれません。

未読ですが原作は、本作のような構成のようですね。
過去と未来を行ったり来たりする。

二本で完結させるには、本作の構成が悪くないと思います。
まず、子供時代で戦いがあり、問題は保留されたまま
27年経ち忘れようとしていたトラウマと向き合う。

「それ」を克服すれば、「それ」を喰らい生きている
ペニーワイズは弱体化するわけで、
笑っちゃうオチではありますがあの最期は納得いくものです。

基本的にペニーワイズはまさにピエロ、
狂言回し的存在でした。
彼が繰り出す色々は、ドッキリ的なものでしか無かったです。

怖いのは、負け犬達が抱えていた「それ」や、
人間達の行動です。
舞台のデリーは、保守的で負のエネルギーが漂う街として描かれています。
それは前作でも、本作の冒頭の凄惨なゲイカップルへの暴力でも分かります。

ペニーワイズは、人間の負の部分、恐怖につけ込み生きています。
逃れる事が出来ない子供達が餌食になったわけで、
今のやり切れない世の中には、第二のペニーワイズが
現れても不思議ではありません。
トレバー

トレバー