明石です

ウィザード・オブ・ライズ/嘘の天才 〜史上最大の金融詐欺〜の明石ですのレビュー・感想・評価

4.3
500億ドルという史上最大規模の投資詐欺を働いた男が、自首してから刑務所に入る話。2000年以降の(比較的ハズレの多い)デニーロ主演作の中ではかなり当たりだと思う。傑作ではないかもしれないけど、かなり良作寄りで、個人的にはとても好みの作品です。

『マネーショート』や『ウルフオブウォールストリート』のような詐欺の過程に面白さが詰まった映画とは一味違い、詐欺を起こした人間の人となり(+加害者一家となった家族の顛末)をじっくりと2時間かけて語るという、エドワード・ノートンの『25時間』を思わせる重めの人間ドラマ。なんだかライアーゲームみたいな仰々しいタイトルと、無駄に壮麗なジャケットのイメージを持って見始めると、かなり暗くて地味な映画だなという印象になっちゃう笑。

壮年のデニーロらしくいかにも害のない優しそうなお爺ちゃんが主人公で、その仮面が徐々に剥がれていき、実際の彼はとんでもなく自己中心的な社会病質者であることが明らかになるという筋書き。かなり私好みです。奥さんと睡眠薬を飲んで自殺しようとする描写や、息子が実際に首を吊ってしまうシーンがあったりと、重さの具合が妙にリアルなのも良い。というか話が進むにつれ後戻りできないくらい重くなってくる。

最後のデニーロの”Do you think I’m sociopath?”「私をソシオパスだと思うか?(字幕では「私の心は破綻しているか?」)という台詞が尾を引くようにあとに残る。家族への接し方を見るとそうではないように感じる時もあるけど、彼が騙した人々に対し語った非人間的な感情を考えると、そうとしか思えないこともある。これは真剣に考えさせるラストですね。

観終わってから気づいたけど、このタイトル、”The Wizard of Oz”(オズの魔法使い)とかけてるのか、、笑。にしても内容との乖離が激しい気がするけど。
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