TomTom

ファウストのTomTomのレビュー・感想・評価

ファウスト(1994年製作の映画)
4.3
ヤン・シュヴァンクマイエルの何が好きかと聞かれたら、躊躇なくその「質感」と答えるだろう。
絵画でも彫刻でも魅力的な質感を持つものは所有欲を刺激する。シュヴァンクマイエルの作品も手元に置いていつでも見たくなる魅力がある。

ファウストのストーリーはうっすら記憶している程度だけど、鑑賞しているうちになんとなく思い出してきた。
この「ファウスト」や「アリス」のように原作のあるものをシュヴァンクマイエルが作ると、どれも独特の作風になる。
特に印象的なのが、その「手作り感」である。非現実的な物語をなんとか実写で表現しようと、粘土や小道具のストップモーションアニメや身近なもので録音した効果音で、試行錯誤を繰り返しながら撮影している姿を想像できる手作り感が画面からにじみ出てくる。
それがたまらなくいい「質感」になっている。

この作品が作られた1994年て、メタ構造が流行ってた時期かな、現実と非現実を行ったり来たりする構成が面白かった。特に後半、操り人形が建物のドアから通りへ出たり入ったりする部分は、通行人の反応がゲリラロケのようにも感じられて、何重もの奥行きを感じることができた。

もし「シュヴァンクマイエル・ランド」ができたら行ってみたい。ディズニーランドなんかよりもずっと楽しいんじゃないかと思う。
まぁ誰も作ろうと思わないだろうけど。
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