このレビューはネタバレを含みます
密室の心理劇なんだが、語りたい物語の為に状況を作っている様な作為性とリアリティの無さに、ただただ不快な事が目の前で演じられるだけで、全く入り込めなかった。
心理ドラマも、極限状態の人間を描きたいのか、女主人の家と家族への執着による業が生む悲劇を描きたいのか・・・それともシリアの状況を発信したいのか散漫で、描き切れないから放置したかの様なドラマと幕切れ。
それに突っ込み所が多すぎて書ききれない。
恐らくシリア人から聞き書きしたエピソードを脚本に押し込んだのだろけど、必然性とか演出のリアリティに欠けて、説得力がない。
戦場の強盗が丸腰だとか、そんな事ある?と思ってしまう。
扉は堅牢なのに窓はガラ空きで、スナイパーが昼夜狙っているのに、呑気に照明をつけていたり、窓際でタバコを吸ったり。
そもそも、ハリマの夫が撃たれても助ける気が無いよなぁ。
水道が使えないだけで、電話もネットもあるし、救急車も走り回っているし、アパートには誰もいなくとも近所の隣人や協力者もいるのに、必死にどころか全く助けを求めないんだよな。強盗が入った時もだけど。
暗くなるのを待つ気も無いし。
とにかく部屋の外は危険で閉じ込められている!という密室劇の趣旨なんだろうけど。
部屋に運ばれた夫とハリマの距離感とか、そんな態度を取るか?運び出される時もだけと、もしかしたら今生の別れになるかも知れないのに、見送っちゃうの?そりゃ無いだろ。自己嫌悪的な感情を織り込んでいるのかも知れないけど。
なんか、当事者じゃ無い人間が作ったダメな部分がてんこ盛り。
当事者が当地で作り上げた『ブコバル』の爪の垢を煎じて飲んで欲しい。