シリアにての作品情報・感想・評価

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「シリアにて」に投稿された感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

ステイホーム映画の傑作。

「シリアにて」
IN SYRIATED(IN SYRIA)
2017年 ベルギー・フランス・レバノン
@京都みなみ会館

鑑賞を後悔させるほどの、冒頭から絶え間ない緊張感。
ほぼ密室を描きながら外を意識させる演出が増幅させる閉塞感。
もしかしたら不謹慎になるのかも知れないけど、上質のスリラー、第一級のサスペンス映画だった。

ありそうでなかった戦争映画。
軍人はおろか武器が出てこない。
つまり戦闘シーンがない。敵味方という描写もない。

あるのは、爆撃音と銃声とヘリコプターの飛行音と救急車のサイレンと上階の足音とドアのノックと赤ちゃんの鳴き声だ。これら全てが渾然一体となってサスペンスを盛り上げる!

シリア内戦のことに明るくないからもし説明があったとしても「そうなのか、うむ」としか言えないけど、背景や理由といった説明をとことん排除してるので、様々な場所や状況に置き換えて考えることができる。
例えばサラエボの包囲戦、例えばモガティシュの戦闘(「ブラックホーク・ダウン」のあれ)、例えば外はコロナだからステイホームしててねと言われた経験のある我々には特に普遍性を感じずにいられない。

廃墟寸前の街の、あるアパートメント。
3児の母親が主人公。
孫娘に「トイレ臭い」と言われてる義父が同居。
たまたま遊びに来てた娘の彼氏。
そしてメイド、上階に住んでた女性と赤ちゃん。
この9人が、5秒後には誰かが死んでるかも知れない環境で、息を潜め、カーテンに身を隠し、鬼節水しながら洗顔したり食事したりトイレ行ったり浴槽でオシッコして怒られたり授乳したり土埃を掃除したりする24時間を描く。

そう、夜明けから夜明けまで。
タランティーノっぽく言えば、From dawn till dawnな物語。夜が明けたらまた地獄が始まる絶望を、僕は経験上、知らない。
マーケティングの見地から成り立ってる多くのハリウッド映画に見られる直接的な描写はほとんどなく、人々の感情の起伏やちょっとした成長など、これ見よがしに見せることを一つとしてしない。なのに、1秒も飽きさせない。

過剰じゃないけど押さえてる演出、それを支える役者の演技。
特に主人公である母親役ヒアム・アッバスの凄みが凄い(語彙力)。演じてるというか、そこで生きている。
生きて、怒鳴り、諭し、ミスを許されない咄嗟の判断を何度も繰り返し、必死で家族を守る姿になんでもいいから贈呈したい。重要な人物である上階から来た女性ハリマはじめ、全員が心の痛みを判る人たちだった。

礼拝の声が聞こえる朝。
家族で1番早起きな義父の横顔を見逃さないでほしい。朝、目が覚めてしまう絶望が刻み込まれた皺の一つ一つまで。

安全な世界で映画を観られる後ろめたさ。こんなこと感じた作品は希少。傑作です。
miyu

miyuの感想・評価

4.0
2016年頃の内戦中のシリアの首都ダマスカスの1日の出来事。。。

見ている間じゅう ずーっと 胃がキリキリ痛む映画だった。。。

アサド政権と 反体制派と ISの対立が激しいシリア…

鳴り止まない爆発音💣💥
機関銃の音
どこからか攻撃するスナイパー
強盗

武器を持たない住人達が 不条理な迫害を受ける…

集合住宅の一室に住む家族と その一家の元に
赤ちゃん連れで避難させてもらってる若夫婦…

この いつ攻撃されるかわからない紛争地の恐怖と言ったら 正直 今のコロナウィルスの昨今よりも 怖い😭

扉一枚で 夫が留守の家族を守ろうとする主婦…

赤ちゃん連れの 夫婦に起こった悲劇…

でも、ホントに この不条理は 匿ってくれた家族に問題があるわけじゃない…
戦争そのものに問題があるし…
その戦争に乗じて 悪事を働くヤカラに 強く憤りを感じる…

戦争 NO‼️🙅‍♀️
花椒

花椒の感想・評価

3.6

このレビューはネタバレを含みます

岩波ホールで見逃してしまったのでアップリンク吉祥寺にて

緊迫の連続ではあったけど、え?ここでエンディング?という印象。

誰に感情移入するかで評価は変わりそう。

おじいちゃんの後のトイレは臭くてイヤ、などは「この世界の片隅に」のような戦争の最中にも日常生活があることを想起させる。

大まかな人間関係はわかったけど、イマイチわからないニュアンスもあり、何か見逃してしまったのかな?

個人的にはあの状況下で赤ん坊から離れていたことに尽きる。自業自得で他の人を責める資格はないだろう、と思いました。

エンドロールがフランス語に記号がいろいろついているような感じだったけどベルギー語なのかな?
ノンフィクションとしか思えない映画。

理不尽に自由を奪われる現実が世界で起きている事実を常にこちらに突きつけてくる。
面白い、面白くないの尺度で語れない。
不勉強な自分の様な人に届いて欲しい。
重々しい映画でした。インナースペースで繰り広げられるいつ死んでもおかしくない緊張感のある世界。本編を見てからわかったんですが、この映画は予告編でキモとなる部分はほとんど説明してしまっているのですね。なのでそこからどういう展開になるかを期待して観ました。シリア内戦の中、この世界には常に死と隣り合わせで生きている家族がいるということを思い知らされる映画なのですが、内容はもう一つでした。あくまで映画として。本編では1日の家族の出来事を描写しているのですが、極端に言えばただ単に1日を追っかけてまた同じ朝が来るということで映画が終わってしまいます。もちろん、内容に込められたメッセージ的なものはなんとなく理解はするし、物語の中で悲惨な出来事が多々あり、抑揚はあるのですが、うん。なんで家主は匿った夫婦の旦那が狙撃されたことを映画のおしまいの方まで黙っていたかとか、長老の立ち位置とか、頑なすぎる家主とか、途中の子供の長老に対する悪戯とかですかね。クライマックスの旦那さんを助けに行く青年はよかったと思います。その前の若奥さんとのやりとりがあったからね。
桑畑

桑畑の感想・評価

3.6
家族を守るためとはいえ残酷とも言える苦渋の決断をする主人公に複雑な思いを抱いてしまう。戦争の1番の被害者は善良な市井の人々。
戦闘シーンなんてほぼないのに戦争が本当に恐ろしくなる戦争映画。やるせない。
観始めてすぐに、前に観た事があるのに気付きました…

2017年の東京国際映画祭で既に観てました。

シリアを描いた映画はとても気になるので、よく調べもせずに無条件予約してました。

家のドアの厳重過ぎるロック、通りを歩くだけでスナイパーに命を狙われる…

早く、こんな映画が作られなくなる事を願います。
babygrand

babygrandの感想・評価

3.8
辛い映画だった。平穏な日常から一変、他人達が勝手に起こした戦争に巻き込まれ、自分の人生が無惨に破壊されるなんて、もう最悪すぎる。

同じ題材の「娘は戦場で生まれた」とセット観ると良いかも・・というか「娘は...」の方が断然出来の良い名作だったな。(ダマスカスとアレッポの違いはあれど)

皆んなを仕切るお母さん役の女優さんの演技が結構良かった。お母さんってやはり強いな、、。
すー

すーの感想・評価

4.0
紛争が激化するシリアの首都ダマスカス。
アパートの一室をシェルター代わりに身を寄せる一家と隣人。皆を取り仕切る女主人は留守中の夫に変わって皆を守ると必死になる姿に強いな…と思う。しかしそれ以上に体当たりの演技を見せたディアマンド・アブ・アブードが素晴らしかった。

緊迫した一日をドキュメンタリーかのように映し出す。戦場を映さずとも伝わるその凄まじさに絶句。
ウロフ

ウロフの感想・評価

3.9
内戦のさなか、アパートの一室で息を潜めて暮らす家族。外の様子はカーテンの隙間からと、音でしか察することができない。

「ようこそ映画音響の世界へ」を見たあとだったので、まさに「画面外の出来事を直感的に観客に理解させる」音の力を実感しました。突然の爆発音、近づいてくる足音…胃がキリキリしそう。これが毎日続くと思うとほんと地獄。

非常時の判断って難しいなぁ…誰かに良かれと思ってとった行動が、どんな結果をもたらすかは…
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