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怪怪怪怪物!のyのレビュー・感想・評価

怪怪怪怪物!(2017年製作の映画)
4.7
小説家、九把刀ことギデンズ・コーを日本で一躍有名にした「あの頃、君を追いかけた」から6年、彼が作り上げたのは、青春映画の傑作と言われる自らの実体験でもある前作を否定しかねないような、人間の醜さが生み出した怪物の物語だった。

「あの頃、君を追いかけた」とは似ても似つかぬように見えるこの映画だが、実際はコインの裏表のような関係にあると思う。もしパラレルワールドが在ったとすれば、1つの人生のあらゆる分岐の中の2つとして存在していてもおかしくないような、普遍的で世界中のどこでも起っている“青春の1ページ”に違いない。ギデンズ・コーは、ただのジャンル映画としてのホラーを越え、誰かの幸せの裏にある誰かの不幸について、人間の首を刈り取って内臓を丸ごと裏返しにしたような悪意を“怪物”というメタファーでもって描き出し、腐った社会に対するアンチテーゼとして世の中に解き放った。

一流のクリエイターながら映画監督としては新鋭にあたるギデンズ・コー。あくまで本作は演技・演出・脚本において、映画として完成されているとは言えないと思うけれど、意識/無意識問わず、心に何かがつっかえていて取れないような思いを抱えた一部の人々に強烈に刺さる作品だと思う。思っていて吐き出せない何かを代弁してくれるような存在で、戸惑いもあり感想を整理するのに時間がかかってしまった。論理で映画を観るタイプだと思っているけれど、久しぶりに論理度外視の感情で観たような気がする。とても好きな作品だった。色々と思うところはネタバレで書きたい。
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