あでゆ

怪怪怪怪物!のあでゆのレビュー・感想・評価

怪怪怪怪物!(2017年製作の映画)
4.6
いつもクラスメイトにいじめられているリン・シューウェイ。そんな彼はある日問題を起こし、いじめっ子3人と共に奉仕活動としてある老人宅にお手伝いをしに行くことに。そこでモンスターに遭遇した4人は、そのモンスターを捕らえて独自の実験を開始する。

なんでこんなタイトルなんだろうと思っていたんだけど、原題は『報告老師!怪怪怪怪物!』らしい。「先生!!かかかか、怪物です!!(震え声)」みたいなことなんだろうか。
監督の名前であるギデンズ・コーも「九本のナイフ」という意味の芸名らしく、とにかく尖っているなという印象。

B級映画だろうとおもって舐めて観たのだが、めちゃくちゃ面白い怪物みたいな映画だった。
とにかく序盤から裏切られ続ける。冒頭はいじめられっ子がその学園生活に悩む暗く重い青春映画と思いきや、いじめられっ子が老人のいじめなどにも加担する複雑さを見せる。しかし、そこからの『ドント・ブリーズ』的な展開の後にはモンスターと格闘、そして物語はよきせぬ展開へと着地する。

話は正直ずっと嫌なことが続き、正直直視するのが辛い場面もあるのだが、とにかくスピード感にあふれていて、飽きのこない展開にかじりつくように観てしまった。怪物に対しても人間に対してもめちゃくちゃ嫌な描写が多い。怪物には太陽に弱いという弱点があるのが、この映画の救いと思えるぐらい、生殺しのしんどい描写が続く。

青春映画にふさわしいロックで突き抜けたメロディが劇伴として流れるのも、ミスマッチではあるがオシャレで映画の性格にあっている。
殺人描写でも青春映画のラブシーンのような鮮やかさが映えるのが良い。

主人公が怪物に触れていくことで少しずつ変化し、最終的にどんな決断をするかというところまで余すところなく面白い。ついでに言えばラストのあるミスリードもさりげないが非常に見事だった。

いじめといえば、いじめっ子が犯す罪はともかくとして、先生サイドもなんのやる気もなく、むしろいじめに対して加勢しているくらいの勢いなのが驚いた。これは有り得る話として描かれているのかどうなのかがよくわからないが、台湾ではこのような現実が問題とされているのだろうか。

この世は誰もがクズであり、誰もが怪物である。そんな映画のロックなメッセージというか、パワーみたいなものに照らされて、久々に映画で圧倒されてしまった文字通りの怪作。
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